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仕上げられる悪女

 再び部屋がノックされた。


 「シャルロッテお嬢様、そろそろお支度を始めないと間に合いません」


 扉越しに、若い女性の声が聞こえた。まだ太陽も高く明るい時間なのに間に合わない?さっき女神が見せた映像的に、パーティーって夜じゃないの?

 そう思いながら返事をする。


 「……入っていいわよ」


 その言葉を合図に扉が開くと、入ってきたのは、可愛らしいメイドだった。栗色の髪を綺麗にまとめ、エプロンドレスを着ている。彼女は私を見るなり軽く礼をした。


 「本日は王国主催の夜会ですので、お早めに準備へ移らせていただきます」


 夜会、そうだよね。でも、今から?その疑問を口にする暇もなく。


 「まずはご入浴です」





 強引に連行された私は、慣れた手つきで寝着を脱がせられ、まるでどこかの旅館ほどの大きな浴槽にはいい香りのする花が浮かべられていた。


 世話係のメイドやあまり見たことの無いメイド、複数人が私を取り囲むと、


 「こちら失礼します」


 なるべく羞恥心を無くし、堂々とした態度で身体を洗われ、そして体の隅々まで丁寧にマッサージをされた。本当にお姫様になった様で、気分が良くなった。


 



 「ではお食事です」


 出されたのは綺麗なグラスのみだった。中には白いどろっとした液体が入っていた。



 「……ご飯は?」

 「夜会前ですので」


 そう言ってメイドは淡々と言った。その圧に負け、まるで病院食のような流動食だった。

 美味しいんだけど、咀嚼したいななんて思いながら、空きっ腹に流し込んだ。




 「次はメイクです」


 まるで、壊れ物を触るように優しいタッチでメイクが進んでいく。知らない美人がいるって位メイク技術が凄かった。




 「失礼します」


ぎゅう。


「…………」


ぎゅうう。


「………………」


ぎゅうううう。


「い、息……」

「もう少しです」


 待って。何でこんな苦しい思いしてるの?悪女って身体張る仕事なの?

 コルセットをしている世の女性達に尊敬の気持ちが溢れてきた。



 豪華なドレス、輝く装飾、首元の宝石。鏡の前に立つとどう見ても貴族令嬢なシャルロッテがいた。すごく綺麗な外見に思わず見惚れてしまう。


 

 でも疲れた、もう帰りたい。ここへ来て半日、何もしてないままメイドに言われるまま着飾られ、事件解決どころか身体の自由もない。




 結局私は空いた隙に、小瓶だけをバッグの奥へ隠した。

 そんなことを考えているうちに、馬に乗せられ情報収集も出来ないまま、女神との会話を思い出した。


 窓の外を見ると、のんびりと街並みが流れていく。夜に近づく空、馬車の揺れ、王宮に近づいていく度に緊張してくる。


 ここで失敗したら明日処刑されてしまうかもしれない。一度死んだ身でありながらやはり怖いのは怖いのだ。


 嫌な気分にしかならないので考えるのをやめると、馬車の揺れが止まった。



 扉が開くと、外へ目を向けると目の前にあったのは現代では絶対に見られないほど巨大な城だった。


 ここで、シャルロッテは犯人になる。私は小さく息を吐くと、犯人にされる前に犯人を探さないと。私が馬車から降りようとすると。


 「シャル」


 こちらに手を差し伸ばしながら愛称で呼ぶ人物がそこにいた。


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