犯人にされた悪女
困惑しながらベッドの下を見ると、そこには小さな小瓶が転がっていた。
透明なガラス瓶は中身は空なのか、光に透かしても何も見えない。
豪華な部屋には似つかわしくないほど小さく、けれど隠すように置かれている。不思議に思いながら手に取ると女神は、静かに告げた。
『それが、皇太子殺害未遂に使われた毒です』
「……は?」
思わず間抜けな声が出た。
持っていた瓶を危うく落としそうになり、慌てて握り直す。
『正確には、使用された毒と同一の毒物が入っていた容器です』
私は小瓶とベッドの下を交互に見ると、少し考える。
「あ」
女神は何も言わずに、私の考えを待つようだった。
「……これ、先に誰かが置いたってこと?」
『その通りです』
やっぱり、私が答えると女神は続けた。
『本日の王国主催のパーティーにて、シャルロッテが不審な行動をしていたという証言が上がります』
今日のパーティー会場であろうか、大広間で煌びやかな会場が空中に映し出された
その中で一人の女性、シャルロッテがワインの近くを通るのを何人かがそれを見つめているのがわかった。
『その後、皇太子へ渡される予定だったワインを調査した結果、珍しい毒物が発見されました』
景色が変わると、複数人がシャルロッテが近くに居たと口々に言い、周囲のざわめきの中、兵士達はシャルロッテを取り押さえた。
『目撃情報も複数存在していたため、シャルロッテは軟禁という形で城内の一室へ移送されます』
さらにシーンが変わるとワンルームほどの部屋が映し出された。窓もなく、閉鎖的な部屋だった。ドアの向こう側には兵士達が見張りをしていた。
シャルロッテに至っては、ベッドの上で座を抱えながら顔を伏せ声を押し殺しながら泣いているように見え、胸が苦しくなった。
『察しの通り、その間にシャルロッテの部屋捜索により、この小瓶が発見されます』
『毒物が極めて珍しい種類だった事、証拠品と一致した事から、シャルロッテの犯行と断定されました』
景色の中のシャルロッテが何かを叫んでいる。此方には声は聞こえていないが、きっと弁明しているのだろう。
綺麗な表情、綺麗なドレスに見合わない表情で泣きじゃくりながら訴えたいる。
『シャルロッテは無実を訴えました』
『ですが聞き届けられることはなく、翌日処刑されます』
映像が消えると、静まり返った部屋で私は瓶を見つめた。しばらく考えると、女神に言った。
「じゃあ、これを処分すればいいって事?」
女神は少し間を置いた。
『はい』
よし、簡単じゃん。そう思った次の瞬間。
『ですが』
その続きの言葉に嫌な予感がしたが、女神は淡々と続ける。
『そうすると、別の方法でシャルロッテの犯行が証明されます』
「……は?」
『この小瓶は証拠の一つに過ぎません』
『犯人は、シャルロッテが犯人になる前提で準備しています』
スーッと背筋が冷えるのが分かる。
『つまり、貴方の目的は証拠隠滅ではありません』
『真犯人を見つけ、シャルロッテではないと証明してください』
私は小瓶を再度見た後、窓の外の太陽を見つめた。
……待って、整理させて。
「つまり私」
「異世界初日で、半日以内に毒殺未遂事件を解決しろって言われてる?」
『はい』
女神は少しだけ明るい声で言った。
『頑張ってください』
私やっぱり、この女神嫌いだ。空になった瓶を握りしめた。




