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一人目の悪女

 小鳥の囀りが聞こえ目を覚ますと、そこには見慣れない天井があった。まだ上手く回らない頭を抱えながら起き上がる。


 部屋の中を見るなり、現世では見たこともないくらい大きなベッドで目を覚ました事がわかった。


 近くにあった全身鏡を見て、あの時空間に映し出された女に成り代わっている事で女神との会話を少しずつ思い出していった。


 「そもそも、処刑回避なんてどうすればいいのよ」

 そんな小言をこぼす私に、女神の声が聞こえた。


 『無事に代われたようですね』

 私はその声にびっくりして辺りを見渡すが、声の主は近くには居らず、部屋には私しか居ないようだった。


 「どこにいるの」

 『私はそちらの世界には直接干渉は出来ないので、直接貴方の脳に話しかけています。貴方にはそうですね、テレパシーといえば分かるでしょうか?』

 

 他の人に成り代わらせることが出来るなら、テレパシー位出来るかと自分で納得させた。

 私が何も言わないでいると女神は続けてこの世界についてと、この成り代わった人物の説明を始めた。


 『ここは、貴方の世界の全くの別の世界。貴方が成り代わったのは、この世界の悪女と呼ばれる人物。名前はシャルロッテ

 このタラバス王国の皇太子の婚約者です』


 今座っているベッドや、身につけている寝着も通りで豪華な訳だ。


 「それで、そんな婚約者様がどうして処刑されるわけ?」


 『王国主催のパーティーで、王太子に毒殺を試みた事により処刑されます』

 

 思ったよりも物騒なワードが出てきて驚いたが、少しだけ安堵した。只々私が毒を盛らなければいいって事ね。

 それよりも一つだけ疑問がある。


 「何でシャルロッテは毒殺しようとしたの?」

 少し間を開けた女神は淡々と告げた。


 『いいえ。シャルロッテは毒殺などしておりません』

 「どういう事?」

 

 『シャルロッテは、嵌められたのです。』

 「嵌められた?」


 『はい。つまり、皇太子を毒殺しようとしたのは別の人物です。』


 シャルロッテは毒殺してなかったのか。よかった。ん?てことは


 「罪を擦りつけられたって事?」

 『はい。正確には毒殺未遂に仕立て上げられたという事です。』


 私はまた一つ溜息を落とした。


 「どの世界も、悪人はいるもんだね」

 『今の貴方も悪女と呼ばれる人ですけどね』

 

 「で、そのパーティーとやらはいつ開催されるの?」

 『今日です』


 女神のその返答に、私は思わず叫んでしまった。だって、そんなに直ぐだとは思わないでしょ。ていうことは処刑は明日ってこと?嘘でしょ


 コンコン


 私のいる部屋の扉がノックされ、どうしようかとあたふたしていた。


 「どうかされましたかお嬢様。大きな声が聞こえたので来てみたのですが」


 メイドだろうか、若い女性の声が扉越しに聞こえる。


 「大丈夫よ、なんでも無いわ。少し悪い夢を見てしまったみたい。下がって大丈夫よ」


 不意に出た返事は私ではなく、身体に染みついたシャルロッテの口調だった

 メイドは私の返事を聞くや否や、扉からは離れ廊下を歩いていった。


 『しっかりとシャルロッテに成り切れているようですね』

 感心するように女神は言うが、別に私がシャルロッテを装って放った言葉じゃなかったけど、特に気に留めずに、さっきの続きを聞いた。


 「シャルロッテは明日処刑されるっていう認識で言い訳?」

 『理解が早くて助かります』




 なんの悪ぶれもないその返答に少しだけ呆れてしまう。


 「さっきそんなこと言ってなかったよね?」

 『聞かれなかったので』

 

 あ、あれだ。私、この女神嫌いだ。

 はぁ、と一つ溜息を落とした


 「それで、私のこと導いてくれるんでしょ?」

 『はい』


 女神はそう答えると

 『では、ベッドの下を覗いてください』


 唐突にそんなことを言い始めた。



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