大海原の二人
帆は風をはらみ揺れている。これから向かうははるか南の島。本当にこの国広いなとジャンニは虚ろに呟く。
そのお供にベレッタは妙に機嫌がいい。ベレッタはジャンニの従者兼護衛として様々な場所について行っている。
ジャンニの仕事上かなりの辺境に向かうことが多い。
そのため不満たらたらなのがいつものことなのだが。
「お前、なんか隠してないか」
「何がです。私は常に真面目な軍人です」
衛兵なので軍人の端くれには変わりない。本当に端くれだがとジャンニは口の中でだけ呟く。
波は穏やかだが日差しは強い。頭に布を被っているが日差しは針のように頭皮を痛めつけている。
実は親族に髪に恵まれていない方々が多かったりするジャンニはその布をぐっと握りしめた。
「本日の目的って何ですか」
「今頃聞くのか?」
「だって、あの南の島ですよ、南の島って果物が甘いことで有名なんですこれから甘いもの三昧できると思ったらうれしくて」
浮かれたことを言うベレッタにジャンニは頭を抱えた。どうしてこういう護衛に当たってしまったのか運命を呪った。
「俺たちの今回の目的は、虹色の竜だ」
「そんな派手な色のドラゴン、いましたっけ」
実際ジャンニも聞いたことはない。今現在知られているドラゴンはほとんどが灰色や苔のような緑色。でなければ深みのある黒。一番派手な色合いで赤茶色を赤い竜と呼んでいるぐらいだ。
「だが、目撃談もあるからな」
「目撃談、いったい何年前のですか?」
ジャンニの仕事になる未確認動物はほとんどが数百年前といった大昔の話ばかりだ。
「去年だ」
「え、珍しい」
「その竜は、毎年のように見られているそうだ」
「なんで、それで謎なんです? 毎年見られているんですよね」
確かにベレッタの疑問はもっともだ。実際ジャンニもその話を聞いたとき頭の中が疑問符で埋め尽くされてしまった。
しかし、わからないものはわからないのだ、それに竜は危険な危険な生き物だ、何しろ見上げるほどの巨体であるし。ほとんどが肉食動物だ。そのため、竜が出たとなるとほとんどの住人はその場から避難してしまう。そのため、生態を観察するのも命がけだったりする。
「そういえば、もし竜が出た場合、その魔法で何とかなりますか」
普通の衛兵であるベレッタに竜と戦うスキルがあるはずがない。その場合は魔法使いであるジャンニが出るべきだ。
護衛なのにと言ってもらっても困る、この場合適材適所だ。
「俺に、竜と戦えるほどの魔力量があるはずないだろう。できるのは隠蔽だけだ。視力聴覚嗅覚の三つをごまかすことができる」
「それで結構です」
「だが、体温はごまかせないんだよな。まれにだが体温に反応する生き物もいるので」
「その時はあきらめます」
ベレッタはため息をついてそう言った。




