報告書
翌日、二人は元の宿に戻った。そしてそのままジャンニは報告書をまとめ始めた。
「結局何だったんですか」
「単に山の下のほうに抜け道があったということだ。まあ、あれを通れるのはねずみくらいだったんだろうな」
ジャンニは首をこきこきと鳴らした。
「多分、以前にも同じことに気が付いたんだろう。俺の時のように足が一本なかったのか、それとも面白い模様でもついていたのかは知らんが。本来越えられない山を越えているねずみがいると。だがその時はどうやって越えたのか調べることができなかった」
ベレッタは軽くこめかみをもんでいた。
「山の下に穴が開いてるって、ちょっと危なくないですか。崩れてきたりなんか」
ベレッタが焦ったように聞き返す。しかしジャンニはひょうひょうとしたままだ。
「それはもう俺の仕事じゃないよ」
「そうなんですか」
「報告書には最後に地質関係の探索者を派遣すべきだと言っておいた」
「そうですか、でもなんで山に穴が開いていたんですかね」
「さあ、もしかしたら、もともと地下水流があって、それに地面が隆起したせいで水が抜けるなんてことがあったのかもしれない」
「ちょっと山が隆起ってそんなこと起きるんですか」
「割と起きるみたいだぞ、以前聞いたんだが地震の後平地だった場所が丘になったことがあったそうだ。まあ地震の規模によるかもしれないが」
「そんな地震、起きたんですか?」
恐々と聞いてくるベレッタにジャンニは首をかしげた。
「俺が聞いた限りではないな、まあもしかしたらその地震が起きたとき、この周辺に人が住んでいなかったのかもしれないし。小規模集落だったんでそのままなかったことにされたのかもしれない」
「ぜひ、前者であってほしいですね」
後者はあまりに悲惨すぎた。ベレッタの創造する地震に小規模集落の住人が生き延びるのは極めて難しいだろう。
「まあ、これで調べはついたし。穴の位置も大体地図に書き込んだし、これで仕事は終わり、明日帰るぞ」
「あ、それならこれから急いで買い物を」
ベレッタはこの地域に伝わる希少な塩を使った干し肉を買い込むつもりだった。
「それは絶対経費に含めないからな」
ジャンニは重々しく言った。




