四匹の普通じゃない動物
二人はそのまま兎と狐を見ていた。
「このまま観察していてもらちが明かない気がします」
ベレッタの言葉にジャンニもうなずく。
「だが、うかつに触るのもな」
仕事という名目でやってきたので仕事道具は一通り持ってきている。さてどれを使ったものか。
「とりあえず。こうしますね」
ベレッタは腰に差した剣を手にした。
普段はそれを使うことはまずない。それを考えると今回はかなり危険だと判断したのだろう。
ジャンニは自分とベレッタに隠蔽をかけた。
できる限りの安全策を用意する。
「仕事するつもりじゃなかったのに」
そんなことをぼやきながら。
兎と狐は不意に走り出した。
「追いますか?」
そうベレッタが問いかけたがジャンニは大きく肩を揺らした。
「この足音」
かなり大型の生き物の足音だと分かる。ベレッタも刀を構えたまま木を背中につけた。
「わあ、熊だ」
ジャンニは顔をひきつらせた。この辺りの動物の生態はそれなりに調べていたが、熊は秋にならないと降りてこないはずだった。
「通常の行動に外れたことをするんですよね」
ベレッタが嫌な予感がすると眉をひそめた。
クマの後ろから大鹿が現れた。
巨大な角を広げた堂々たる大鹿はゆったりと歩いている。
「うん、この鹿も向こうの山にいるはずの生き物だよな」
ジャンニがうなる。
「これも普通熊は食いに行きますよね」
「多分、そうじゃないかな、生息域も被っているし」
隠蔽をかけたままだった二人は先ほどの兎と狐を見た。
四匹はそのまましばらく見つめあっていた。
通常の食物連鎖を無視した四匹はぐるりと振り返りじっと二人を見ていた。
「あの、隠蔽かけているんですよね」
ベレッタが恐る恐る聞いた。ジャンニが苦虫をかみしめたような顔をして四匹を見ていた。
「この隠蔽は通常の動物なら完璧にだましきるはずだ。あれは通常の五感で周囲を探っているのかもしれない」
「どうするんですか?逃げても逃げ切れるもんじゃないですよ」
熊も鹿も兎も狐もすべて人間より俊足だ。つまり逃亡は無意味。
「それなら戦うしかない」
ジャンニは隠蔽を解いた。
「お前も、狐や兎くらいは打ち取れるんじゃないか」
ジャンニは魔法を使う用意をした。首から防御のペンダントを出した。
「普通の狐や兎ならね」
ベレッタはそう言って剣をかまえた。




