見なければよかった
竈に当たりながら明らかに休日を楽しむ気満々となっているジャンニにベレッタは尋ねた。
「ここに何があるんですか」
ベレッタはそう言ってそのままお茶を口に含む。
「ああ、それはな」
ジャンニはしばらく考えていた。
「なんだかわからんが、何やらこの辺りの動物は妙な行動をとるらしい」
そう言ってポリポリと頬を爪でひっかく。
「妙な行動?」
ベレッタは首を傾げた。
「どういう行動なんですかね」
「生態的にあり得ない行動らしいがそれ以上のことは俺もよく知らない」
ジャンニも首をかしげる。しかしもともときちんと調査するつもりはない。単に人気のないところでちょっとした休暇を楽しもうと思っているだけだ。
「ありえないってああいう感じですか?」
ベレッタがジャンニの背後を指さす、ジャンニが振り返って見れば方向には兎と狐が並んで歩いていた。
「え?」
ジャンニが目を見張った。
「ふつう、ああいう状態なら狐は兎を食べますよね」
ベレッタが平たんな声でそう言った。
ジャンニは呆然として目の前の光景を見ていた。狐と兎は足取りを合わせてゆっくりと歩いていく。
ウサギが逃げる様子はない。
「なんで?」
ジャンニはその場で手をついた。
「仕事する気なかったのに」
地面に膝をついて顔を覆って嘆く。
「そうですか、仕事するんですか」
ベレッタは憐れむような眼で見ていた。出張という名目でもぎ取った休日だったはずなのに結局真面目に仕事をしてしまうジャンニ。
見て見ぬふりをするという選択肢は彼にはないらしい。
「真面目過ぎて哀れですね」
そう言ってベレッタは目の前の狐と兎を捕らえようとした。
「ちょっと待て、あれにうかつに触るな」
ジャンニはベレッタにそう注意する。
「あれは明らかに通常の兎と狐のとるべき行動をとっていない。それがなぜなのか考えたが、一番ありそうなのはあの動物が何かに操られているということだ」
「操られている?」
ベレッタが首をかしげた。
「そうだ、それが何かわからないうちはうかつに近づかないほうがいい」
「そうすると同調も今回はしない方向で?」
ベレッタの質問にジャンニは同意する。
「当然だ。俺はそこまで無謀になれない」




