野営の憩い
ジャンニは人里離れた山の中に野営していた。
頑丈な布で出来た天幕を用意し食べ物は保存食と山菜だ。
「一気に食生活が貧しくなったんですが」
ベレッタが苦情を申し出た。
「いいじゃないか、この辺りには高級キノコが生えていたはずだが」
「え、どんな見た目でどんな場所に生えているんですか」
ベレッタの顔色が変わった。
「確か特定の木の下に生えているんだ。その木の葉っぱはな」
そう言ってジャンニは一つの水晶を取り出した。軽く魔力を込めるとうっすらと光りだし五角形の葉っぱを持つ植物の姿を映し出した。
「この形の葉っぱですね、覚えました」
そのまますたすたと歩きだす。
「迷子になるなよ」
ジャンニがそう言ったが聞こえている様子はない。まあ迷子になったとしてもベレッタには万が一に備えて位置を確認する魔道具を持たせている。ここは基本的に人はいないしめったに入らない。ベレッタにもしものことがあるとしたらちょっと肉食の強い大型獣でも出た場合だろう。
ベレッタもそれなりに経験を積んでいる。自分で避けるなり戦うなりできるだろう。
そんなことを考えながらジャンニは天幕の前に竈を作り始めた。
まず土を掘る。穴をあけたらその下に石を敷き詰める。そしてその上にここまでくる間に集めておいた枯れ木を空気の通り道を考えながら組んでいった。
そして、穴の淵に鉄棒を置いた。
それで竈の完成だ。
枯れ木に魔力で火をともす。そして穴の上に置いた鉄棒を支えに鍋を置いた。
保存食は基本的に水分を抜いてあるものばかりだ。飲み物なしで口に入れれば口の中の水分を一気に持っていかれる。
料理まではしないが最低限の加工はするつもりだった。
持ってきた荷物は重かったが今回の出張はすべて野営だったのでゆっくりと過ごす予定だった。
どうやらベレッタは迷子にならなかったようだ。
両手いっぱいにキノコを採って戻ってきた。
「どれが高級キノコですか」
息せきってそう尋ねてきた。
木の下にあると言ったのでその近辺で見つけたキノコを根こそぎ持ってきたらしい。
「とりあえず、これは外れだな」
黄土色のキノコを明後日の方向にほうった。
「これもこれも」
そう言ってポイポイ捨てまくる。
「これだけだな」
一本だけ残ったキノコにベレッタは打ちひしがれた。
「ああ、このまま食べれないぞ、カラカラになるまで干してから、また水につけて戻して戻し汁を捨てて、それから煮込んで」
「どれだけかかるんですか」
「その手間も含めて高級キノコだよ」
ベレッタはそのまま突っ伏した。




