海上避難
宿から荷物を持ち出すと三人でこれからの行き先を考えた。
「そういえば船を調達しましたよね。これから海に出るのはどうです」
ベレッタがそう言った。
ジャンニはしばらく考えてから頷いた。
「いいかもしれないな。逃亡するにも海からがいいかもしれない」
「逃亡ですか? でも一体何を言われているか気になりませんか?」
ベレッタが眉をひそめながら言う。
「うん、いくら何でも変なことを言われてないといいけど」
「あっちに指名手配所なんか送られていないといいんですが」
ベレッタの言葉に二人は青ざめる。だがジャンニは思い出した。
「こっちにも一応連絡手段があるけど」
そう言って懐からいざという時に連絡用に持たされたものを取り出した。
小さな水晶玉だ。
「ちょっと場所が悪いな、つながりにくい」
指先でつついて反応を見る。
「つながらないって、いざという時に役に立たなくないですか?」
「そんなはずないんだが」
ジャンニが困惑している。
「とにかく、ここから逃げよう。命あっての物種だろう」
デニスがそう言った。二人は顔を見合わせる。
「まあ。そうですね」
二人はちょっと引っかかるものを感じたが、今回は忘れることにした。
漁師に頼んで船を出してもらう。
その船はそれなりに大きく。小屋程度の建物が船の中心に作られていた。船の持ち主は厳つい髭で顎を覆った二人組。たぶん兄弟だなとジャンニは推測した。
「雨風を防ぐためだな」
それなりに長期間海の上にいるためそうした建物がいるのだろう。建物の中には毛布と食器類などが用意されていた。
蝋引き布に網や銛が包まれている。
船の縁に寄りかかる形で座り込んだ。顔が見られないようにだ。本来二人だったのに一人増えたことで追加料金を取られた。
それでも徐々に外海に出るとようやく三人は大きく息を吐いた。
「さすがに、ここまでは来ないですよね」
ベレッタがそう言った。
「あれ、どうしました」
ジャンニは何度も水晶玉を触っている。
「いや、反応がおかしい」
困ったような顔をして水晶玉を握っていた。
「その、早く連絡をつけてほしいんだが」
デニスはそう言って船べりに座り込んだまま動かない。
「あれ、島がある。」
船べりに肘をついていたベレッタが海の中に円錐形の島が付きだしているのが見えた。
「ああ、あの島は近づいてはいけないことになっていますよ」
船乗りはそう言った。
「なんですか、それ」
ベレッタは不思議そうな顔をする。
海鳥が島に集まっていた。
「あれ、雲行き怪しくないですか」
ベレッタが指さす。
見れば海の向こうから暗雲が徐々に迫ってきていた。
「通り雨かねえ」
漁師の言葉に慌てて三人は建物の中に避難した。




