脱走
ジャンニとデニス、ベレッタと別々に投獄された。
「お前の出張って、こういうことがよく起きるのか?」
デニスがいかにも不本意そうに聞いた。
「いや、俺自身はこういうことって初めてだぞ、危険は全くないとは言わないが」
いわゆる未開の土地に行くことが多いため自然現象に危険にさらされることはたまにある。しかしいきなり役人に捕らえられるのは初めてだ。
「それより、お前がらみじゃないのか?」
そう言い返されて怪訝そうな顔をする。
「稀覯本なんて確実に収集家がいるだろう、キチガイじみた収集家ならこの手の陰謀をやらかしても不思議じゃないんじゃないか?」
そう言われてデニスは黙る。実際に稀覯本をめぐって殺人事件もあったよなあと思い出していた。
「とりあえず、出ますよ」
牢の外にいつの間にかベレッタが来ていた。
「治安が悪いというのとは違うようですね」
そう言ってベレッタの指示通りにジャンニがカギを壊した。壊れた錠前が床に落ちてどこか鈍い音がした。
「あれ、壊せるんだ」
デニスが驚いて目を見開いた。
「魔法が使えると便利だな」
そう言って牢を出た。そして人が来るかと周囲の様子をうかがっていた。
「実は料理に毒が混ぜられていまして」
ベレッタがさらっと言ってみた。
「毒?」
あまりに物騒な言葉に二人は呆然とした。
「ちょっとした軽食が出たんですが。それに毒が入っていました」
そう言ってベレッタは外に出ようと促す。
三人は外に出ようとした。それを妨害してくる他の兵隊と思われる男たちが駆けつけてきたがベレッタが一人を抑え込んだ。
「こいつの命が惜しかったら我々を開放しろ」
無表情にそう言った。
「いや、それお前が犯罪者」
ジャンニが突っ込む。デニスはもう何も言えないでいた。
ベレッタは相手の首を掴んだ状態で歩き出す。
「私は簡単に喉くらい握りつぶせるのであしからず」
にっこりと笑う。そのままジャンニとデニスはベレッタについて行った。
詰め所を出るとジャンニが隠蔽魔法を展開した。四人の姿は誰にも見えなくなる。
「行っておくが、これは複数人分なら一時間が限度だ」
「それじゃ、適当に着替えでも調達しますか」
「盗むんじゃないぞ」
「大丈夫です、ちゃんとお金おいておきます」
ベレッタがそう言って三人で移動する。ベレッタが買い物をしている間は二人はで地裏に隠れていた。
「で、一体何がどうなっているんだろうな」
「衛兵にまで力が動くって単なる収集家とも思えないな」
二人はそろって首をかしげる。
「そっちの仕事内容は」
「こっちは動物の調査だ。今回は魚なんで漁師を雇ってこれから海に出る予定だったんだが」
二人はため息をつく。
「こうなると仕事どころじゃないな」
そんな話をしている間にベレッタが戻ってきて二人に上着と帽子を差し出した。
丈の長い上着と帽子を被って人相をできるだけ隠す。
「靴も履き替えてください」
踵のある靴をデニスに差し出す。
「これで同じくらいの身長になりますから」
デニスは暗にちびと呼ばれたことにちょっと唇を嚙んでいた。
「これからどうする」
「とりあえず、隠蔽をかけたまま宿に戻って荷物を取りに行きましょう」
確かに荷物を置いたままだった。




