空間転移
山間の村にようやく二人はたどり着いた。
縞模様のねずみが二人の前を横切っていく。
「あれは」
ベレッタがそのねずみを指さす。
「この辺りでは珍しくもない縞ねずみだな。近隣の村にもいるらしいが」
ジャンニはそう言いながら宿として用意された家に向かう。
この村は辺鄙な場所なので人口はさほどではない。産業はある程度標高の低い場所ならば普通の材木があるのでその材木の加工と近くの山でとれる岩石。
実は結構な高級石材なので、定期的に運搬人がやってくる。その運搬人が使う宿に半月ほど滞在できることになっている。
周囲の建物は腰まで石組で作られその上に木材で出来た屋根が乗っているという作りだ。
石は灰色の土で固められている。
「石灰かな」
ジャンニが腰を曲げて石組を確認する。
この村の宿は一軒しかないためすぐにわかった。
その周囲には屈強な男たちがたむろしている。
あの険しい道で石を引いて進むのだ。とうぜんそこにいるのはすべて筋肉の塊のような男達だった。
その中で普通体形のジャンニとベレッタは浮き上がって見えた。
あてがわれた部屋に入ると寝台が二つあった。ジャンニは以前、巨大な寝台が一つしかない部屋に通されたときのことを思い出し。思わず安堵した。
あの時はベレッタが寝台を独り占めしジャンニは床に荷物を枕にして眠らざるを得なかったのだ。
一応上司だというのに。
「それでこれからどうするんですか?」
「まず、隣村に向かうけど」
「隣村なんかあるんですか?」
ベレッタは不思議そうな顔をした。
「くだんの動物は。この村から隣村に空間転移したそうだ」
「いや、ちょっと、その隣村ってどれくらいの距離なんですか?」
この村に入るとき隣村なんか見えなかった。おそらく肉眼で確認できる距離ではなかったのだろう。
「半日歩くことになるな、早朝に出発して夕方につくくらいか?」
ジャンニが荷物から地図を取り出して隣村の位置を確認する。
「お隣っていう概念が崩壊しそうです」
ベレッタはぐちぐちと不平不満を垂れ流す。
「まったこの村って美味しそうなものは何一つないし、辺鄙だし宿もそっけない作りだし」
「当たり前だろ、こんな村で豪華な宿を作ったとしても誰が泊まるんだよ」
まっすぐな正論にベレッタは黙った。
「空間転移なんて、上級魔法使いにならないと使えないって話ですよね、けだものができるって与太話本気で信じてます」
「それを調べるのが俺の仕事だ」
グダグダなベレッタにジャンニも切れそうになる。
「とにかく、今日は休め、明日からまた山越えだ。
ベレッタはそのまま寝台に倒れこんだ。




