二人組
険しい山岳地帯だった。標高は高く空気は澄んでいるが冷たい。
樹木は高く育つことができず吹きさらす風に押しつぶされそれでも果敢に枝を伸ばしていた。
てくてくと二人組が歩いていた。険しい山道だがその足取りは確かで随分と健脚のようだ。
一人はぼさっとした薄茶の髪を無造作にくくり生成りの、少々薄汚れた服を着こんだまだ若い男。そしてその傍らには長い焦げ茶の髪をきっちりと結い上げて、生成りの服の上に要所要所に防具を身に着けた若い女。
「いい天気だね」
そう言って男は空を仰ぐ。くくった髪は強風で逆立つ。
男の名はジャンニ、王宮から派遣された探索官だった。
探索官とは様々なジャンルにわたり国中の様々な事象を調べ記録するという仕事だった。その中でジャンニは動物関係を調査していた。
そんなジャンニに連れの女は胡乱な目を向ける。
「いい天気って、こんな寒さじゃ天気もへったくれもないじゃないですか」
彼女はベレッタ、ジャンニの部下として派遣された衛兵だった。
「お日様が出ているだけありがたいじゃないか。雲ってきたら即雨だぞここで雨に降られたら下手すれば命に係わるんだぞ」
「ほんと、冗談じゃないですよ」
いやそうにベレッタは唇をひん曲げた。
「そっちは自分から志願してきたと聞いたけど、何でそんなにいやそうなの?」
「だって、探索者の仕事につけば国中いろんなところに行くじゃないですか。そしたらいろんな土地の珍しいもの食べ放題じゃないですか」
「随分と率直な欲望だな」
ジャンニはちょっと引いていた。
「なのに、どうして山の中ばっかりなんですか」
ベレッタは思いっきり叫ぶ。
空気の薄い高山でよくこんなに叫べるなとジャンニは呆れた。
「動物調査の仕事だからだよ」
動物の調査なら人里離れた場所に行くことが多いのが当たり前だとジャンニは言いたくなった。
「もうすぐ人里につくから」
ぎりぎりとベレッタが歯ぎしりしているのを無視してジャンニはそのまま歩き続けた。
「しかし、胡散臭い話ですね」
ベレッタが不平たらたらになった。
「だが、分権がある以上調べなければならないだろう」
ジャンニはそう言って背中にしょった背嚢をゆすった。
「だけど、動物が空間移動なんてするんですか」
ベレッタはそう言ってこめかみを指先でかいた。
「だからそれを調べに行くんだろ」
ジャンニはそのまま不平不満を垂れ流すベレッタから目をそらし進んでいく。




