呉越同舟
ジャンニはこれからきちんとしなければと隣人のプロフィールを確認した。今まで取り立ててトラブルがなかったからと言ってこれからもそうとは限らない。
怒鳴りこんできた隣人がデニス、王室図書館勤務。この国の一番格式の高い図書館でありこの国で出版されたすべての図書が納められさらに希少な古文書も。
ジャンニも定期的にお世話になっている場所だった。
それを止めに入ってきたのがファーノ、古文書の研究者。こちらもジャンニがとてもお世話になっている職業である。今まで無関心だったのを本気で猛省した。
そして、もう一人はこの家の持ち主の親戚だという老人でサイモン。妻に先立たれ子供たちは独り立ちしたというこの家の住人唯一の勝ち組。
一度でも結婚できたということで勝ち組。
軽く涙を拭いて久しぶりに職場に行った。
そしてやっぱりその日ジャンニは出張のお知らせを聞いた。
国境沿いの海沿いの街。
やれやれとため息をつく。
以前は南の果てに行っていたのに。
そうため息をついてジャンニは書類を仕上げそのあと家で荷造りをすることになった。
旅行鞄を陰干ししているとデニスがジャンニに食って掛かる。
「またどこかに行くのか、まさかあの人と」
病んだ眼をしてそう詰め寄る。その通りなんだがどう言っていいのか。
困っているとファーノが憐れむような眼をして見ていたがあきらめろと首を左右に振った。
よく考えるとどちらを憐れんでいるんだろう。定期的に婚活したくなるということは今までも婚活してもすべて失敗したということで。
そこまで考えてジャンニは首を何度も振った。
考えるまい。それに今まで一度も婚活を考えたことのない自分にもいらない傷を負わせることになるのではないかと。
とにかく旅行鞄を陰干しは早めに切り上げてジャンニはそのまま旅に出る支度をしていた。
一度職場で辞令を受け取りそれから旅に出る。
本日は途中までは馬車に乗ることができた。
隣にはベレッタ。そして真向かいには。
「何故?」
目の前のデニスに何度も目をこする。しかし彼は消える様子もない。
「俺も仕事だが、そちらと同じようにな」
デニスはぶぜんとした顔でそう言った。
馬車の車輪がごとごとと音をたてている
ふと外の風景を見てみようかという気分にもならない。まだ王都からさして離れていない。窓の外は何度も見た光景なので珍しくもない風景だ。
「あちらの蔵書家が亡くなったのでな、めぼしいものを買い取って来いという指令を受けた」
その蔵書家の住所を聞くとちょうどジャンニが拠点にしようとした街の中にあった。
「つまりずっと一緒に行動するということか」
横にベレッタ、真向かいにデニス、実に過酷な旅になりそうだ。
ベレッタは一人状況が理解できず首をかしげていた。状況を説明しようと思ったが一体どこから話せばいいのか。
ジャンニは軽く悩む。
デニスはじっとりとジャンニを睨んでいる。
そんな二人を見てベレッタはこの二人喧嘩でもしているんだろうかと悩んだ。




