虹色
ジャンニのが消えた後ベレッタはその場に立ち尽くしていた。
できるだけ息をひそめ自分の身体から出る音を最小限に抑えて。
できれば心臓の音も小さくしたい気分だったがそれは断念した。呼吸をできるだけ浅くして呼吸音を小さくしようとした。
しばらくそうしていたが不意にけたたましい鳥の鳴き声が聞こえた。
おびただしいと言ってもいいくらいの鳥が周囲を飛び交っている。
大きさはすべて小鳥だ。巨大な肉食鳥は見当たらない。
盛んに鳴きかわす小鳥を見ていると不意に空が虹色に煌めいた。
空が虹色の何かに隠されている。それは燦然と輝いている。
先ほどジャンニに渡されたものを思い出して慌てて懐から出す。
ベレッタは先ほど教えられたようにそれを虹色に煌めく巨大なものにかざした。
緊張のあまり手が震えるがそれでも必死にそれを支え続けた。
鳥がベレッタの周りをしばらく飛び交っていたが一斉にその虹色に輝くものに向かって飛び去って行った。
「何が起きているの」
必死に声を殺していたがそれでも出てしまった呟きにとっさに片手で口を覆う。
周囲を見回すが自分に近づいてくるものはいない。
ベレッタは片手にジャンニに渡された記録用の魔道具。そしてもう片手に自分の中型剣を手にした。
周囲を警戒しつつそれでも記録を続ける。
ジャンニが一刻も早く戻ってくるのを待って。
ジャンニはしばらく歩いていくと小鳥が騒ぎ出す羽音を聞いた。
梢の間を激しく飛び交っている。
「ああ、そろそろか」
ジャンニは鼻先を飛んでいく蝶を見つけた。
この辺りでは果物の葉を食害する幼虫を産む類の蝶だ。
くすんだ緑色の蝶をしばらく眺めていた。
小鳥の鳴きかわす声は徐々に激しさを増していった。様々な種類の小鳥。それらが一斉に鳴きかわす。
空に何やら光るものが現れた。その光るものが徐々に大きく、ついには巨大といってもいいほどの大きさになっていった。
それは虹色の塊になっていく。
「ベレッタはうまく撮ってくれたかね」
先ほど頼んだことを思い出しつつ呟く。
目の前の小鳥をとっさに捕まえてそのまま視力を片目だけ交換する。
そしてジャンニは木にもたれた。
この術を使うと動くときにいろいろと不都合があるのだ。おそらく今回は短時間で済むだろう。
ジャンニは片目を閉じると小鳥と同調した状態である眼だけで周囲を観察する。
小鳥は煌めくものに向かって徐々に高度を上げていった。
そろそろその煌めくものの正体がわかる。
虹色の塊に向かって飛び込んでいく小鳥。
その横に先ほどのくすんだ緑色の蝶も飛んでいた。




