最後の晩餐?
竜を目撃したという人々に聞き込みを開始した。
竜はこの近くにある森の上空を飛んでいたそうだ。
「でも、なんかあんまり一貫してなかったですよね」
ベレッタが口をとがらせる。竜の形状についていろいろと矛盾した証言が出たのだ。
竜はとても細長かったという証言があったが、次に証言した相手が竜は丸かったと言い張っていた。
「細長い竜が、丸まれば丸く見えるんじゃないか」
ジャンニはそう言って地図を確認している。地図には竜の目撃情報が記されている。
「森に入るんですか」
目撃情報はすべて森を指示していた。
「当然だ」
当たり前のことだ。竜の最も多い目撃場所は森ならば森に入って痕跡を探すのは定石といってもいい。
「森って、隠れる場所ありますか?」
竜が出た場合のことを考えたようだ。
「まあ、森だから木はいっぱいある、木の陰に隠れたらそのまま木ごと潰されるかもしれないな」
ひとかけらの救いのないことを言った。目撃した話から代替の竜の大きさを推測した結果だが。
「料理屋に、料理屋に行かせてください。ここの名物料理をおなか一杯食べておきたいんです、せめてものその」
「最後の晩餐か」
涙目のベレッタにジャンニが身もふたもないことを言う。
「ええ、その覚悟ですよ、末期の一皿ですこうなれば食べて食べて食べまくってやる」
ベレッタの座った目にジャンニはやれやれと肩をすくめた。
いろいろと森に入るための装備品を買い集めその後晩餐にベレッタが求めるこの辺りの名物料理を食べることにした。
「緑色の果物か、珍しいな」
薄紅色の魚の身と緑色の果物が和えられている。果物はすりつぶされているため元の姿がわからない。
ジャンニの知っている果物は熟すると赤くなるか黄色くなる。あるいは中間のオレンジ色か。もしかしたら未熟な果物を使っているのかもしれない。熟した後の甘みを避けて純粋に酸味だけを楽しめるように。
フォークに刺した魚を口いっぱいにベレッタは頬張った。
みるみる眉間にしわが寄る。
「やっぱり酸っぱかったか」
ジャンニはそれを見て少量ずつ魚の身を口に入れた。食べてみると魚のみの甘さと酸味が小気味いい。果物の甘さを排しているのは魚の身の甘みを際立てるためだろう。
口を押えて悶絶しているベレッタに水を渡した。
「がっつくからだ」
不満たらたらという顔のベレッタは水を受け取り、今度は少量ずつ口に運ぶ。
「めっちゃ味が濃い、もしかして酒のつまみですか」
周りを見れば料理と酒を楽しんでいるものばかりだ。
「あの、酒は」
「今、仕事中だからな。禁酒に決まっているだろう」
無慈悲な言葉にベレッタは涙する。
「ちょっとぐらいいいじゃないですか」
「明日仕事が終わってからな」
「生きて帰れるかわからなじゃないですか」
そう文句たらたらなベレッタを一蹴する。
「それを励みに明日死ぬ気で生き延びればいいだろう」
ジャンニはそう言ってまた魚の身を一口口に入れる。珍しく今回はジャンニも気に入った料理だった。




