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不倫された上に「コストカット」と自社からリストラされたおっさんエンジニア、中1に戻って未来の知識で大富豪になる  作者: 猫又ノ猫助
第2章高校編

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第四十四話:新世紀のトロイ

 一月の中旬。

 藤堂たちの追放から半月。平穏を取り戻した中で、2000年代の幕開けを記念した「首都圏高校生IT研究発表会」というイベントへと参加してみると、会場である都内のコンベンションセンターは独特の熱気に包まれていた。


 ――生徒会長を兼任しつつ、学校の情報処理部として『片手間に組んだ』、展示型セキュリティデモのブースだった。


「おい、マジかよ! 佐藤が作った防壁、まだ誰も突破できてないのか!?」


「当たり前だろ。他校の有名なパソコン部の奴らや、院生や企業のハッカーまで挑戦しに来たらしいけど、サーバーへのアクセスした直後にログを逆探知されて、画面に警告が出て強制終了フリーズさせられるんだよ」


 ブースの中央に置かれた特設モニターには余興として残した、シンプルながらも絶対的な強度を誇るファイアウォールが稼働していた。


「――ふふ、佐藤くん。みんな完全に降参状態だね」


 受付のパイプ椅子に座りぬるめの緑茶を飲みながら、華が楽しそうに微笑んだ。そんな彼女に笑顔で返しながら、ノートパソコンを小脇に抱え淡々とその光景を観測していた。


「ただの余興だよ、白雪さん。市販のセキュリティソフトの基準値に合わせて、バグ(不正アクセス)を自動で弾くようにパッチを当てただけだからね」


 国家予算級のインフラを動かす仕事の合間に作った、文字通りの『遊び』に過ぎない。


「――よし、それじゃあ俺もちょっとその絶対防壁とやらにログインさせてもらおうかな」


 突如として、ブースの入り口から、周囲の空気を一瞬で凍りつかせるような、流暢ながらもどこか異質な日本語が響いた。


 人混みを割って現れたのは、制服の上から高級な黒のロングコートを羽織った、モデル並みの体躯を持つ一人の青年だった。彫刻のように整った容姿、金色に輝く髪、色素の薄い冷徹な瞳。その圧倒的なオーラに、周囲の学生たちが自然と道をあける。


 少年は周囲の視線など一ミリも気に留めず、傲慢な足取りでデモ端末の前へと歩み進め、ポケットから自前の超近代的な小型ノートデバイスを取り出した。


「君が……佐藤蓮、か」


 青年が、蓮を射抜くような視線で見つめる。

 蓮の脳内が、瞬時にアラートを鳴らした。この少年の瞳、誠に醸し出す圧倒的な自信は只者には見えなかった。


「……挑戦するなら、どうぞ。制限時間は三分です」


 蓮が冷徹なトーンで応じる。青年は不敵に口元を融かすと、デバイスをデモサーバーへと接続した。


 次の瞬間、ブース内の空気が一変した。


 青年の指先が、人間の限界を超えた速度でデバイスを叩く。トリプルモニターに表示されていた蓮の防壁コードが、見たこともない海外製の多重侵入プロトコルによって、メキメキと音を立てて侵食され始めたのだ。


「――なっ!? おい見ろよ! 佐藤の防壁の数値インジケーターが削られていくぞ!?」


「嘘だろ!? 数秒で暗号階層を三つもパス(突破)しやがった……!」


 周囲の観客たちが悲鳴のような声を上げる。

 蓮の瞳が、初めて鋭く細められた。青年が使っているロジックは、一九九九年現在の世界水準を遥かに超越している。それは、蓮が持っている「前世の未来知識」でさえ予測のつかない、次世代の超近代的なサイバーアーキテクチャだった。


 ――開始から、丁度3分。


 パチィン!!


 ブースの一台のモニターが激しい電子音を立てて完全に反転し、蓮が仕掛けた防壁が、中央から綺麗に『両断シャットダウン』された。


「……フッ、素晴らしい。僕の退屈を三分も凌いでくれた。合格点だよ、佐藤蓮」


 レイはデバイスを引き抜くと、何事もなかったかのようにコートのポケットへと手を戻した。


 防壁が破られた。その絶対的な現実に、発表会場全体が静まり返る。華が不安そうに蓮の学ランの袖をきゅっと強く握りしめた。蓮は彼女の手を優しく握り返しながらも、正面の怪物を冷酷に見据え返した。


「海の向こうのトップレイヤー、ですか。わざわざ日本の高校生の研究発表会に来てまで、何が目的です?」


「挨拶だよ。僕の新しい『コレクション』になる君たちの顔を、直接見ておきたくてね」


 青年はそう言い残すと、驚愕する観客たちを無視して、優雅にブースを去っていった。


 沈黙が支配するデモ端末の画面。蓮が壊されたログを修復リブートしようとキーボードに触れた瞬間、反転したモニターの最深部に、レイが侵入の痕跡として残していった『暗号化されたテキストファイル』が自動でコンパイルされ、画面に浮かび上がった。


 そこにあったのは、単なる勝利のログではない、不気味な宣戦布告な書き置きだった。


『――佐藤蓮へ。

 藤堂のような無能な犬をいくら合法的にデリートしようが、日本市場の利権はすでに僕たちの団体が掌握しつつある。数年後、君たちが進学する大学という次の段階で、本当のゲームを始めよう。君の構築する【RS-HS】という国家インフラのマスターキー、そして君の隣にいるアートの女神ごと、僕の完全な奴隷コレクションに書き換えてあげる。

 せいぜいそれまでに、その防壁を僕の本当のシステムに耐えられるレベルまでアップデートしておいてくれ。新世紀の社交界で待っているよ』


「佐藤くん……これ……」


 華が青ざめた顔で画面を見つめる。


「大丈夫だよ、白雪さん」


 蓮は冷徹な支配者の瞳を取り戻し、画面の不快なテキストを一瞬で完全消去した。


「奴がどれだけの巨大資本と未知のロジックを抱えていようが、関係ない。大学までに、俺のシステムを世界の頂点へアップデートする。俺たちの未来には、指一本触れさせない」


 新しい時代の幕開けを感じさせる冬。

 佐藤蓮の前に、前世の因縁を超えた「最終章」へのゴングが、今まさに静かに鳴らされようとしていた。

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― 新着の感想 ―
残してった文章の奴隷と書いてコレクションは言い訳が効かないアウト発言だし、ハッキングしてやる宣言も含めて普通に警察に通報するだけでお縄になりそうなんだけど… ハッカーは秘匿性があるから脅威なのに本人が…
優秀そうだし、佐藤に弟子入りする路線に200000ジンバブエドルをBETするわ
噛ませ犬はビッグマウスになればなるほど滑稽でよい
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