第三十話 事前の慣らし・中編
「雪代さん、これは……?」
「術式の過剰出力。古い時代の空気感に近いから出力が跳ね上がったんだよ」
「な、るほど……」
それはちょっと困るな。軽いだけ、と言われればそうだけどその軽さが手元を狂わせるのがいただけない。多少慣れれば使えるかな、魔力濃度の違いでここまで重さが変わってしまうと咄嗟の反応に遅れが出る可能性もちょっとあるぞ。
「ちょっと待て、外羽呼ぶ」
「華蓮を?」
「おう。こういうのは製作者に任せるに限るだろ」
手早く雪代さんが連絡を飛ばせば、これまたすぐに華蓮がレンと一緒に現れる。足を踏み入れる前に何が起こっているのかを華蓮達は察したらしい、一瞬だけ足を止めたけれどすぐに躊躇いなく入って来た。
「綾華」
「だんなー!」
「華蓮、レン」
「斧が軽すぎるって聞いたんだけど……」
「うん。雪代さんがいうにはそういうものらしいんだけど」
「まぁそう。ちょっと調節するな?」
「はい」
華蓮に斧を渡せば、レンが代わりに飛び移って来る。……レンは特に影響とか受けていなさそうだな。遣霊は魔力濃度の影響を受けないのかもしれない。
「だんな、なんなな?」
「大雅のこと?」
「なん」
「大雅はちょっと慣れなくて苦戦してるだけだよ」
「なんな!」
「はは、不甲斐ないばかりです……」
「いやいや、この濃度で平然と動けるのが特殊なだけだと思いますよ。特に綾華は剣だし」
「あっちは?」
「皇さんとテオさんは日頃の動き方を見ても明らかにこういう場所に耐性あるじゃないですか」
「不甲斐ないばかりです」
「分かる。一般的にはお前が過半数だがここではお前が少数派だもんな」
大雅は決して弱くないんだけど、如何せん比較対象が悪すぎる。俺はともかく皇とテオさんはなぁ、かなり方向性が特殊というか、俺達とは根本的なところで違うというか。
「雪代さん」
「お、手合わせ終わったのか?」
「ええ。一応俺とテオは想定通りの動きが出来たので……」
「流石ですね……」
全く負荷を受けている様子がない二人。軽くとはいえ手合わせをしていたのに息切れすらしていない。鍛え方の差……なんだろうか、そもそもどうやって鍛えたら魔力濃度の差に適応する肉体が手に入るんだ。
「二人は……」
「俺はまだちょっと動くのは……」
「私はそもそも立つことすら……」
「ま、これが普通なんだよ」
「……幽撃で補助すればいいのでは?」
幽撃……で?テオさんもこくこくと頷いていることからそれが有力であることは分かるんだけど、どういう意味かはさっぱり分からないぞ……?
「すみません皇さん、おっしゃっていることがよく……?」
「そのままの意味なんだが……」
「俺も分かんねぇんだけど」
雪代さんも分からないとなると、これはもう解析不能なのでは?
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