第二十八話 空論に近い現実論・後編
「ここは……」
「一応聞いておくね。……有り得るの?」
「……不可能ではないでしょう。ですが、基本的には有り得ません」
アランさんの発言に布袋さんと藍沢先生は深刻そうな表情を見せる。どういうことなんだろう、俺が示した場所は、どちらもそんな異常とは思えない……少なくともスペースとアビスの近くにある、ということしか分からないんだけど。
「あの……どういうことですか?」
「スペースとアビスにある特性遮断区域は…………現在、使われていません」
「え?」
そんなはずは、と言いかけて”有り得ない”の意味を悟る。使われていないはずの場所にある反応、普通に考えれば俺の間違い、ということになるんだけど……一応俺の言葉を真と置いた上で考えてくれているらしかった。
「まだ可能性が高いのは」
「スペース……でしょうか。入江さん、候補地が二ヶ所である理由を聞いても?」
「藍沢先生から見せられた日誌から取れた情報が、ややノイズがかっていて」
「ノイズ……ですか」
「はい」
俺の言葉にアランさんはしばし考え込んだかと思うと、改めて地図を見る。よりによって、どちらも使われていない……というのはどういうことなんだろう、まるで、そうあれかしと望まれている、ような。
「そもそも何で……この二ヶ所は使われなくなったんですか?」
「スペースは特性遮断区域に怪異が適応しかけたため、アビスは、特性遮断区域だろうと関係なく怪異が出没したからですね」
「そんなことが……え、特性遮断区域に適応?」
「はい。自身の周囲を特性遮断区域同様の状態にする……それはもう酷い状況でしたね」
基本的に職員の戦闘手段は特性を使うものであるのに、その特性が使えなくなったのなら阿鼻叫喚になっただろう、完全適応しなくてよかったというべきか、はたまた危険性を把握しながらもゴーサインを出したであろう上層部を糾弾するべきか。
「どちらにせよ危険が残る場所なんですが……確かにあの二ヶ所なら、気付かれない、というのも納得ですね」
「ああ成程、アランにとってもノーマークだから……」
「ええ、そもそも指令も来ないので、あれだけ動いていても気付かなかった理由にはなります」
「仮にそうだとして……その場合、どうやって安全を確保してる?」
「それこそ認識阻害でしょうね。上位存在から逃げられるほどの認識阻害なら、怪異相手にも効きます」
「範囲を絞ってるとかじゃなく?」
「ええ」
アランさんはしっかりと頷き、そのまま視線を俺の方に向けた。困惑は見えない、ただひたすらに静かな瞳を俺も負けじと見つめ返す。
「入江さん、この二ヶ所を……同時に攻略しましょうか」
「……はい?」
同時に……攻略?
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