第二十五話 後悔の理由・後編
「すみませんお待たせし……すすす皇さん!?どうしたんですか!?」
勝手に入ってきていい、と言っていたが故に一声かけて扉を開けたミライさんが俺を見て慌てたような声を出した。どうしたんだろうか、と疑問を抱く前にスミレが俺の頬に触れ、大粒の雫を掠めとる。
「……泣いてる?」
「え、無自覚……!?」
「無自覚!」
「わぁ!?」
比較的入口からは見えない位置にいたゾエに驚くミライさん。ゾエは別に気にしていないのかポンポンと自分の隣を叩いて座るようにと促す。……まぁアルカもなにやらまだ居座る気みたいだからいいか、と俺も促せばミライさんは困惑しつつも腰を下ろした。
「ど、どうしたんですか……?」
「いや……俺にもよく分からない」
「(ふきふき)」
「(ぐいぐい)」
スミレとアルカに布を押し付けられているのは恐らく涙を拭おうとしているからだろう。今も止まらないのか、自覚すると頬を伝う感覚が煩わしい。とはいえ拭っても拭っても止まる気配がないので諦めた。
「皇さん……悲しいんですか?」
「いや……そんなはずは」
「志葉悔しい!」
「……悔しい?」
ゾエの発言にミライさんはきょとんとした表情を浮かべ、もう一度悔しい、と口に出す。そうしてから俺の方に視線を向けて来たので、黙って頷いた。
「何か……あったんですか?」
「まぁ……そうだな」
「多分私が聞けるような内容ではないと思うんですけど……その、無理、してませんか?」
「無理……はしてないな。別に戦闘をしたわけでも、負傷をしたわけでもない」
「物理的な負傷じゃなくても、無理は無理ですよ?」
「ケガ?」
「怪我は怪我でも……心の怪我、ですね」
「心のケガ!」
ゾエは納得した、と言わんばかりに頷いているが……別に悔しかったという感情が傷になっているとは到底思えないんだが。感情の揺らぎくらい幾らでも起こりえるだろう。ミライさんに詳細を話せていないからこその齟齬、という感じではあるが……流石に今開示するのは不味いだろうな。
「志葉!痛い!」
「別に痛くはないぞ」
「泣いてる!」
「(こくこく)」
「それは……」
涙を指摘されて言葉に詰まる。悲しい訳ではない、でも流れる涙を止める術がない。どういう感情、どういう心情なんだこれは?スミレの方に視線を向けてもせっせと涙を拭うばかりで答えてはくれない。
「皇さん、今すごい寂しそうな顔してますよ?」
「寂しそうな……」
「はい。泣くのを我慢してるみたいな、そんな顔をしてます」
ぺたぺたと頬に触れる。何度触っても、俺がどんな表情をしているのかは分からなかった。
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