第二十四話 後悔の理由・中編
「知らないはずの相手に会って、その相手の発言を聞いて、それが俺にとって納得出来なかっただけだ」
「誰?」
「さぁな。ユウヒのマスターで、俺も記憶がないだけで知り合いらしい、ということくらいしか分からない」
ああいや、厳密にはスミレも知り合いの可能性があるのか。俺の言葉にゾエは知り合い、と反復して首を傾ける。
「知らない?」
「ああ知らない。少なくとも――――今の俺の記憶にはない」
「??」
「昔の記憶がないんだ、俺は」
「ない!?」
……そんなに驚くようなことだろうか。言っていなかったのは確かだが、それは普段の生活に影響がないからで、開示したからと言って何かが変わるようなことでもないんだが。
「ない!困る!」
「いや……そんな困ってはいないだろ、現に開示しなければ気付かれないようなものだったし」
「困る、ない……?」
「少なくとも俺は困らない」
あまり納得していなさそうだな。ゾエは眉を下げたままスミレとアルカに視線を向ける。見られていることに気付いた二人は少しだけ動きを止めゾエと見つめ合った後、こくりとうなずいて俺をぺちぺちと叩いて来た。……何なんだ一体。
「発言、何?」
「まだ気になるのか。…………『もし、自分が世界の敵だとしても、手放さないという選択肢を選んでいいのか』、だったな」
「?」
「(……)」
「実際は不可抗力だったみたいだが、少なくとも再会する気はない、とも言われた」
「……困る?」
「まぁ……個人の選択とはいえ、な」
他者の選択を否定出来るほど高尚な人間ではないが、どうしたって人間は可哀そうな方に肩入れしてしまう。公平な判断など程遠い、ただ自分のエゴで人を判断し、ユウヒの為に相手の選択を踏みにじろうとしている。
「納得出来ない、何?」
「それは……」
俺が納得出来ない理由。……本当にどうしてだろうな、ただ説得が出来なかったから、では説明できない燻りがある。ただ本人から突き放された、だけでは言い表されない感情が。俺自身は関係がないのに、ふつふつと怒りに近い何かが渦巻いている自覚がある。
「……手放すことを受け入れて……足掻く気がないから、だろうか」
「嫌?」
「ああ、嫌、だな」
同意の声に僅かな納得が乗る。そうだ、何もかもを諦めていたあの瞳、あの表情が何よりも許せなかった。まだ終わりだと決まった訳じゃないのに、全ての可能性が潰えた訳じゃないのに、もう全て終わりだと言わんばかりのあの表情が、伸ばされなかった、手が。
「悔しかった、やるせなかったんだ……」
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