第二十三話 後悔の理由・前編
マークをなぞる。意識を沈めてみる。何も意味がないと知りながらももう一度を試してしまうのは悪い癖だ。膝上でスミレが暇そうに手を重ねたりへばりついたりしてきたので、応えるように揉んでみる。
「(もちもち)」
「……どうして、こんなに納得がいかないんだろうな」
「?」
スミレは不思議そうに見上げるだけだ。イデアは相変わらず床にあるものを巻き込みながら転がるだけで、俺の問いに答えることはない。当たり前だ、むしろ言葉を返される方が混乱するかもしれない。
「志葉!ん!」
「ん……なにしてるんだゾエ」
「いた!」
「い……取り敢えず入ってこい、アルカも怯えてる」
「ん!」
勢いよく扉を開けたゾエがアルカを抱えていて思わず思考が逸れる。また来たのかアルカは。恐らく気ままに散歩でもしていたんだろうが、ゾエに見つかった上に捕まって完全にフリーズしているな。手早くミライさんに連絡を飛ばしつつ様子を伺う。
「(もそもそ)」
「(むいむい)」
ゾエが室内に入りアルカを地面へと降ろせば、ててて、と近付いて来てスミレに頬を寄せる。相変わらず仲が良いな、何か通じ合うものがあるんだろうか。ゾエはというと二人のやりとりを見てアルカが無害だと判断したんだろう、興味深そうな表情は浮かべるが特に手を出さずに二人を眺めている。
「……ゾエ、ちょっといいか?」
「ン?」
俺が声を掛ければ何の警戒もなく顔を上げるゾエ。ゾエにこんなことを聞くのはお門違いだろうか、別に答えを求めていないのなら良いのかな、俺の言葉を待っているゾエを見ながらぼんやりと思考する。
「……志葉、元気ない?」
「いや…………まぁ、そうだな。少しだけ、考え事をしていた」
「考え事」
「ああ」
「?」
アルカも気になったのかスミレにくっつきながらも俺を見上げて来たな。スミレも俺を改めて見上げて来たので図らずしも視線が集中する。心なしかイデアもこちらを見ているような気がして、思わず動きを止めてしまった。
「志葉、考え事」
「あ、ああ」
「(じー)」
「(じー)」
「何なんだ一体……」
急に空気感が変わったな。別にそんな真剣になるような話ではないんだが、ゾエはしきりに俺に話を促してくる。
「志葉、何考えてる?」
「何……って。別に、最近のことだが」
「最近のこと、何?」
「どういう質問なんだそれは……」
何だか、あまりにもゾエが興味津々すぎて逆に困惑してきたな。スミレとアルカも熱心に俺の顔を覗き込んできているので、落ち着かせるために俺はゆっくりと口を開いた。
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