第二十一話 当事者の発言・後編
少しあとに志葉さんとユウヒさんが合流して、医療部門で起こったことをかいつまんで話す。特に口を挟まず黙って聞いていた藍沢先生は、アランさんが取り出した日誌を見て少しだけ眉を上げた。
「こちらになるんですが」
「……確かに、俺の筆跡ではないな」
「実際ユウヒさんのマスターだろう、と言われていますからね。……藍沢先生、一体どこで何をしていたんですか?」
「……そうだな。情報としてはほぼ役には立たないと思うが……」
藍沢先生はそういって一度だけ日誌に触れる。ぺらぺらとページを捲ったかと思うと、とある日付を指さした。
「この日、研究エリアから依頼が来た。健康診断……とは言っていたが実際は診療、治療だった。減った薬剤から察するに相手は栄養失調、食事すらまともにとってないんだろう」
「研究エリアから……それは」
「ああ。研究員だとは思えない、そもそもそれなら記憶を抜く意味がないからな。だが結果として俺の記憶は抜かれた。わざわざ俺に直接連絡を取っていたのは対応出来る人材がいなかったからじゃないか、と思われる」
藍沢先生の言葉に沈黙を返すアランさん。きっと職員ではない、どちらかといえば実験体、栄養失調で呼び出された、誰にも手が付けられないような。……ちらりと志葉さんを見ると、ただ静かに話を聞いているだけだった。
「藍沢先生、このマークは藍沢先生に無理をしてほしくなくて渡したもの、と本人が言っていました」
「……俺に?」
「はい。結果としては無意味なものになってしまったので破棄してほしい、とも」
「…………そうか、間違えたか」
志葉さんの言葉に天を仰ぐ藍沢先生。……なんだか、一度の失敗で手放すのはちょっとだけ勿体ない気がするな。本人にとっては巻き込まないための策なんだろうし、そうしないと際限なく被害が拡大するんだろうという想像はつくけれど。
「あいつがそう言った以上、俺が持ってる意味はない。好きに破棄してくれていい」
「……そうですか」
「ああ。恐らく今後俺に依頼が来ることもないだろうからな。…………それはそれとして、だ」
言葉を切った藍沢先生におや?と首を捻る。さっきまでのしんみりした雰囲気はどこへやら、次に口を開いた藍沢先生はもういつものテンションだった。
「布袋、頼みがある」
「え?うん。元々そう聞いてたけど……何を頼むの?」
「魔力濃度を上げる、操作する、維持する装置だ。是が非でもあいつを引っ張り出すぞ」
「わぁ」
「うーんこれはいつもの藍沢先生」
「レンリお前にも働いてもらうからな」
「ぎゃあとばっちり」
全然諦めてなかったな藍沢先生。なんならちゃんと手放されたことに対して不満そうだった。
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