第十八話 俺を知る、俺が知る
「すみませぇん……」
「(うりうり)」
ほどなくして重戦闘区域に来たミライさんは、アルカを受け取るとほっとしたように抱きしめる。アルカも既に落ち着いていたので特段問題なく受け入れられた。
「アルカちゃん、駄目だよ勝手に重戦闘区域に行っちゃ……」
「(ふるふる)」
「首を振ってますね」
「アルカさん、たとえ誰かに言っていたとしても、その人が把握していないと言ったことにはなりませんからね?」
「(ぷー)」
アルカとしてはちゃんと事前に報告していたんだろうか、アランさんの言葉に頬を膨らませて不満をアピールするアルカ。テオに頬をつつかれればすぐに空気を漏らして笑っていたけれど。
「すみませんアランさん、お邪魔しましたぁ……!」
「ああいえ。すぐに対応出来てよかったです。……ああそうだ」
「?」
「ミライさん、本日……異変は、ありませんでしたか?」
「異変……ですか?」
アランさんの言葉にきょとんとした表情を浮かべるミライさん。恐らく先程の術式……について何か感じたことはあるか、という問いだろう。ミライさんはうーん……と首を捻りながら視線を逸らす。
「一部の先輩が……ちょっとだけ騒いでたのは見ましたけど、それくらい……?あ、医療部門の方からとっても強い魔力反応がありました!」
「成程。その魔力反応による影響は」
「ないですね。びっくりはしましたけど、別に悪いものではなかったし周囲に影響を及ぼすものでもなかったので」
周囲に影響を及ぼすものではない……まぁそうか。テオの見立てでも保護術式ではなかった、無論攻撃術式でもないんだろう、ただ本当に……起動させることが目的、のような。
「分かりました」
「あの……何かあったんですか?」
「そうですね……いえ、大丈夫です。何かあればちゃんと報告します」
「そう……ですか。分かりました。じゃあ私達は帰りますね」
「(ばいばい)」
ミライさんは深入りすることなくあっさりと会話を切り上げる。小さく手を振るアルカに応えるように手を振るテオ、アランさんも二人が廊下の角を曲がるのを確認してから扉を閉めてこちらに向き直る。
「テオさん」
「はい」
「先程保護術式ではない、と言っていましたが……結局のところ、これは何の術式なんですか?」
「僕の見立てだと…………どちらかといえば、あれは喚起用の術式です。封じられたものを負荷なく目覚めさせるための」
「封じられたものを……」
「はい。封じられたものを」
ちらりと視線を下げてスミレを見る。ゆらり、と、少しだけ揺れた瞳は、何を問う前にまた閉ざされてしまった。
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