第十六話 正体を問い、詳細を問う・中編
いつか、自分のルーツが知れるとして、そのときそれを明かすのは自分ではないんだろうな、という漠然とした確信があった。なにせこの身も名前も、在り方さえも定められて生きているような生き物だったので。
「俺は……北で師匠、ウォルク・皇に拾われた。多分それ以上の記録はないし、俺の記憶もない」
「そうですね。こちらが把握している記録もそうなっています」
「師匠と出会ってからも北で活動していて……ヒュリスティックに来たのも、師匠に勧められたから、だな」
正確には強くなりたいといったら、いつの間にか行くことが決まっていたわけだが。あまりにも俺が何も分かっていなくてギルベルトさんが頭を抱えていたことだけは覚えている。
「雪代さんには以前楽園種族ではないか、と言われたこともあるが……俺に自覚はないんだよな」
「それはええ、把握してます」
「だからという訳ではないが……俺自身も自分が何者か、というのは分からない」
自分の事なのに、という感情がない訳ではないが、分からないのだから仕方がないだろう。寧ろ俺の方が分かるのなら知りたいくらいである。生活に支障がないとはいえ、なんとなく取り扱いに困ることは事実なので。
スミレは目を閉じて完全にリラックスしている。スミレが気にしていないということはこれは痛みにならない、当たり前だが若干ほっとした。心のどこかでこの会話を止められることを恐れていたのかもしれないし、寧ろ逆なのかもしれなかった。なんとなく落ち着かない心情のまま、俺はテオの言葉を待つ。
「テオさん、発言の真意を聞いても?」
「ええとですね……このマーク、そもそも保護術式を起動させるもの、ではないんですよ」
「……違う?」
「はい。まぁ一応紐づいてるもの的に起動する可能性もあるにはありますけど、基本的には有り得ないし、ましてや人間で赤の他人が起動する、という可能性は万に一つも有り得ない」
「あ、それは俺も知ってます。そもそもマスターの使う魔術は、俺みたいな幻獣種ですら起動出来ないので」
「はい。これは術式の特徴として、ですね」
「そんなものが……」
魔術は使用者の種族等を実質指名することが出来るのか……それの是非についてはともかく、可能であるという事実が衝撃的だったな。基本的に魔術は魔力さえあれば誰でも起動出来ると思っていたので。
「……ん?ちょっと待ってくれ、赤の他人でも有り得ない……?」
「はい。それに関してはこの魔術の起動条件が”自身を知っている人”のみであるので」
「……」
それはつまり…………俺は、あいつと会ったことがあるということか?
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