第十話 呼び声への応答・伍
「っ志葉さ――――!」
アランさんの声が遠くで聞こえている。何が起こった?強い光に晒されて思考が纏まらない。ただどうしてだろう、こんな目を焼きかねないような強い光なのに、どこか柔らかくて、寂しいと感じてしまうのは。
「……ユウヒの、マスターなのか」
光は何も応えない。当然だ、ここに本人がいる訳ではないし、恐らくあのマーク自体に本人の意思はないのだから。それでも口から言葉が零れ落ちたのは……どうしてなんだろう。
周囲の音は聞こえない。ただ静寂だけがここにあり、どこか夢心地にも思える感覚のまま俺は光を見つめている。周囲と切り離されたんだろうか、……アランさんとユウヒはどうしてるだろう、無事なら良いんだが。
気配を探る。何もない白い世界の中で、立っているのか座っているのかも分からない空間で。声はない、気配も碌に探れない、なのに動揺はなくて、不思議と凪いだ心のままで俺は再び口を開く。
「ユウヒが、あんたを探している。記憶がなくなっても、手放されたと分かっていても」
届くだろうか、聞こえているだろうか。無意味だとしても可能性に賭けるのは無謀だろうか。漠然とした祈りでも世界は応えてくれるんだろうか。自問自答を繰り返しながら声を探す、気配を探る。
「もし」
声が聞こえて体が止まる。聞き覚えがあった、確かに覚えがあるはずなのに、思考が鈍化して上手に思い出せない。上手く名前を呼ぶことも、振り返って姿を見ることすら出来やしない。
「そのマスターが世界の敵でも?」
「……その程度なら、別にいいんじゃないか?内容にもよるが」
ユウヒのマスターならきっと悪い奴じゃない。そもそも敵である自覚があってそれを負い目に感じるだけの感性があるのならマシな方だろう、そう考えての回答だった。声の主からの返答はない。
「あんたは、きっと何らかの正当な理由でユウヒを手放したとは思っているし、今の発言から多分自分が世界の敵だと自認しているだろうとは思うが。ユウヒにとってあんたは忘れてはいけない、忘れたくない存在だよ」
「……」
「仮に手放すんだとしても、納得するまで話し合うことは出来なかったのか?」
「…………」
流石に返答はないか。正直話している俺もかなり綺麗事に近いな、と思っていたので黙り込んでしまう気持ちも分かる。どうすればよかったんだろう、どういえば納得したんだろう。
「……もし」
同じ声、だけど少しだけトーンが硬い。まるで何かに耐えるような、何かをこらえるような。押し殺した声が俺の耳をうつ。
「それすらも、許されなくても?」
「それ、は。一体どういう――――」
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




