第八話 呼び声への応答・参
必要な情報は藍沢先生がどこへ行っていたのか、誰の指示で動いていたのか。何が起こったのかを知るためにまずは場所を絞り込む必要がある。故に医療部門にある藍沢先生の部屋へと来た訳なんだが……。
「メモ書きはありますけど、情報になりそうな書類はありませんね……」
「そうですね、指示書はなくともカルテがある可能性に賭けていたんですが……」
ユウヒの言葉にアランさんも同意を示す。書類はかなりの量があるが、直近の案件と思われるものは特段見付からない。三人掛かりで探して何もない、となると非常に困る訳なんだが……そもそも事前情報が何もないのでしらみつぶしに探すしかないのが困ったところだな。せめてなんらかの情報があれば話は変わってくるんだが。そこまで考えたところで、とある書類に目が留まる。
「……ん?」
「どうしましたか?」
「これなんですけど」
「これは……日誌?」
「恐らくは」
やけにすりきれていて一瞬班別がつかなかったが、明らかに報告書やカルテとは違う書類を見つけてアランさんに渡す。使い込んでいるから……というにはあまりにもボロボロじゃないだろうか、そこまで厚みがある訳ではないのが余計に不自然さを加速させている。アランさんも劣化具合が気になったのか、表面を撫でていた。どちらかと言えばそう、経年劣化というよりは雨風に晒されて短期間で劣化した、が近いような。
「無断で見たら怒られそうですが……緊急事態です、後で謝りましょう」
意を決したアランさんがページをめくる。日付は書かれているものの殆ど患者の記録しか書かれていなさそうだな……加えて自分が担当していない患者への内容が多いので情報としてはないに等しいか。それとは別に外側はあれだけ劣化していたのに中身はそこまで被害がないのも気になるところではある。
「……」
「アランさん?」
「どうやら、記憶を抜かれていたようですね」
「記憶を?」
「ええ。本人も自覚があったようですが」
そうなるとますます情報はないのでは……?と思ったが、アランさんは特に気にする様子もなく読み進めている。一通り中身を確認したかと思えば、納得したかのように頷いた。
「おおよその状況は分かりました。戻りましょう」
「分かったんですか」
「ええ。とはいえすぐに動けるわけではないので、準備が必要ではありますが」
すぐには動けないとはいえ、あの日誌から取れる情報があったのか……。今一つピンと来ていない俺とユウヒはただただ感心するしかない。アランさんが日誌を置いて外へと足を向けたので、俺達も倣うように扉へと向かった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




