第七話 呼び声への応答・弐
「そもそも、初期からいる医療部門の職員というのはアカデミー出身ではありません」
「それは……アカデミーが設立される前からいる、ということですか?」
藍沢先生が普段いるという部屋に辿り着き、俺とユウヒ以外に人はいないと確認してからアランさんは口を開く。まさかこのタイミングで説明してくれるとは、てっきり戻ってから補足されるものだと思っていた。
「そうとも言いますが……そもそもこの一種の不死性が担保されている空間で果たして治療行為というのは意味を為すのか、という疑問がありまして。わざわざ人員を割く必要もないだろう、と判断されて設立に関わった家の専属医や関係者が医療部門の職員として存在していたんですよ」
確かに、どんなに怪我を負っても死ぬというリスクがないのならわざわざ治療する意味もないのか。とはいえ死なないだけで怪我をしたら療養は必要になる。もしかしたら動けなくなった時点で自死してリセット、などという行動をしていた可能性もあるが……果たしてどこまでその判断を下せる職員がいたのやら。
「とはいえ欠損等は医者、医療行為に造詣の深い存在が必要だったんですよね。そして当時は捕食型という……その名の通り職員を執拗に捕食しようとしてくる怪異が存在していまして」
「あぁ……」
「大規模な掃討作戦が組まれ結果として数が減り現在残るのはほぼ変異種のみ、という結果になりましたが……こちらの被害も相当大きく、当時存在していた医療部門職員だけでは人手が足りなくてですね。この先類似の存在が現れないとも言い切れないことから、アカデミーにて医療部門職員の育成が開始されました」
「つまり、初期の職員というのは……」
「程度の差こそあれ旧家の専属、加えると今も残っているのは大抵その……研究者気質が強いと言いますか、言ってしまえば人体実験に抵抗がない、あるいは強い興味関心がある者しかいません」
「成程」
アランさんがやけに警戒していたのは相手が責任者……つまり古参であり、純粋な心配をしていた訳ではないと知っていたから、か。つくづくヒュリスティックで、特に重戦闘区域の職員は人として扱われることが稀なんだろうな。基本的には不便と感じないが職務に影響が出るのは困る。
「そこまでいくとそもそも体のいい厄介払いとして押し付けられている気がするんですけど……」
「まぁそういう側面もありましたね。実際当時は医療部門の職員は優秀である必要はない、という認識でしたし」
とんでもない認識だな……優秀である必要はなくても徒に戦力を減らす可能性がある人材はいれるべきではないだろ。
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