第三話 ブラックボックス・前編
「起きませんねぇ」
「おいあーい」
「まぁそんなすぐには目覚めないんじゃねえかな。別に命の危機って訳でもないから安心しろ」
「あーい」
「魔力濃度の落差ってどれくらいで失神するんですか?」
「まぁ藍沢先生レベルになるとかなり落差がねぇと……それこそ魔力爆発が起こるレベルの場所から魔力嵐が起きるレベルの場所に移動するくらいしか。……いや流石にそれは買い被り過ぎか?」
藍沢先生は魔術部門の職員じゃないけど、魔術部門に顔を出すこともあるから本来は早々失神することなんて有り得ない。レンリさんは作業の手を止めないまま僕の質問に答えている。
何もないだろうとは言いつつも護衛として医務室にいてほしいとアランさんに言われて僕とれお、スミレくんは一緒に医務室で待機している。アランさんは医療部門の方に向かうと言っており、志葉さんも同伴すると言っていたのであちらは大丈夫だろう。唯一気になることがあるとすれば二人共そこまで魔術に詳しくないことくらいか。
れおは藍沢先生を覗き込んでは寝ていることを確認し、スミレくんは僕の膝上で大人しくしている。イデアだけはその辺をころころと転がってるけど……まぁ転がってるだけだし大丈夫かな、何か分裂してるけど。
「何があったんでしょうねぇ」
「まぁ割と碌でもないというか、そこまで大々的に言えるようなことじゃないのは分かる。どうせ研究エリア辺りだろこんなことするの」
「僕よく分かってないんですけど、研究エリアって機密エリアの中にあるんです?」
「そう。機密エリアの八割は研究エリアと言っても過言じゃないけどな」
「逆に残り二割って何です?」
「表向きは不明だが…………噂じゃ上層部がいるとか、魔術部門の一部がいるとか言われてるな。個人的には上層部説が有力だとは思う」
「上層部かぁ」
「おぁー」
「(こてん)」
確かに、上層部がいるっていうのは聞くけどどこにいるのかは考えたこともなかったな。特性遮断区域っていうことはほぼ危険性がないと言ってもいい……はずだし、研究部門があるにも関わらず研究エリアだなんていう場所があるのも異常だし。
「実際どうなんだ?お前何か知ってたりしねぇの?」
「おあ!?」
「あ、ナタさんとアロンさん」
「(ふりふり)」
ぬ、と影から出て来た二人にれおが目を丸くしてスミレくんは軽く手を振る。何か当然のように出てきたな……もしかしてずっとここにいるのかな。
「上層部……かは知りませんが、エリック博士が調べていたことは、ありますね」
「ほう、結果は?」
「ただ不明、と」
エリック博士が調べて不明?……なんだかきな臭いな。
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