第二話 可能性を問う
あんだけ言ってたのに結局倒れたのかぁ。俺がちゃんとアランに報告していれば何か変わったかな、変に躊躇わずにさっさと情報共有するべきだったかもしれない。怒られるのなんて今更なんだし。
「やけに深いため息ついてるけどどうしたんだよシンさん」
「いやぁ……なんというか、結局保身に走るとだめだなぁって思っただけ」
「何の話???」
首を傾げるゆっきーを抱きしめる。どっちを選んでもどっちかには怒られたんだろうなぁ、難しいね判断って。
「ねぇゆっきー。魔力濃度の差で失神するって……どういう感じ?」
「えぇ?魔力濃度の差で……まぁ早々ないことではあるんだが、言ってしまえばサウナみたいなもん」
「サウナみたいな?」
「そう。魔力濃度が高いと肉体、精神ともに強い負荷がかかるんだよ。だからそこから魔力濃度の低い場所に出ると抑圧されてたもんが解放されて失神する」
「それ体に悪いんじゃ……」
「悪いよ?一時期魔力を増やす手段として流行ったけど、普通に死人が出てたし」
そんな物騒なものが流行ってた時期があるんだ、魔術師って倫理観だけじゃなくて死生観もバグってるの……?
「つっても今の時代にそんな失神レベルの魔力濃度がある場所なんてないけどなー。意図的に作るにも維持出来ないし」
「藍沢先生がその……何か、失神したんだよね。魔力濃度の差で」
「は?」
ゆっきーの動きが固まる。俺をじっと見つめて、別に嘘を言っていないことを察したらしい。沈黙は二秒、片手が動いて白紙の紙に術式が刻まれる。
「……アランはなんて?」
「医療部門にいく、ってだけ。藍沢先生自身は今レンリくんが診てる」
「成程、つまり安全は確保されてるし失神ってのも間違いはないんだな?となると……」
勾玉を砕けば目の前に半透明のモニターが現れて、そこから無数の情報が飛び出してくる。何を探ってるのかは生憎分からないけど、表情を見る限りあんまりいいものではなさそう。
「青藍さんに聞いた方が早いか……?いやでも特性遮断区域の内訳は分からんって本人が言ってたからな……」
「レンリくんも言ってたね、特性遮断区域が怪しいって」
「実際あそこ以外だと青藍さんが勘付くだろうし、そうじゃなくてもアランが把握してるだろうからな。それにどれだけ範囲を絞ったって周囲に大なり小なりの影響が出る」
レンリ君と同じこと言ってるなぁ……。俺あんまり特性遮断区域に関しては近付いたことなかったんだけど、あそこって一体何やってるところなんだろう。
「……シンさん?駄目だからね特性遮断区域に侵入するのは」
「え、駄目なの?」
「駄目に決まってんだろ機密エリアだぞ!?」
「でも俺って存在が治外法権みたいなもんだし……」
「それで怒られるのはアランだ諦めてくれ」
それは確かに困るなぁ……ばれなきゃ問題ないんじゃない?駄目?
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