閑話その32 遣霊達の抜け出し方・前編
「ところでうぱー」
「ぴ?」
「お前勝手に飛び出した上に人質にされかけたって聞いてるんだけど」
「ぷ!」
「言っておくけど証拠は挙がってるんだからな」
「ぴょー!?」
青藍さんに詰められてるうぱーくんが勢いよく俺に突撃して来る。そのまま逃げるようによじ登って来たからレンが驚いたように声を上げていた。
「なーん!?」
「ぷい!」
「丁度良かった入江、うぱー捕まえて」
「え?はい」
「ぴょお!?」
両脇をがっしりとホールドされたうぱーくんが騙された!と言わんばかりのびっくり顔を浮かべていて思わず笑ってしまう。驚いてる割に暴れないのは優しいね、大人しく抱えられてくれているので、レンも興味深々と言った風にうぱーくんの近くに寄る。
「助かる。そのままちょっと食堂行こう」
「はい」
「ぴょー……」
食堂につくと青藍さんは俺達の分の飲み物まで取って来てくれる。レン専用のコップにカフェオレを注げば、元気よく飲み始めた。うぱーくんもさっきまでの大人しさはどこへやら、目を輝かせてココアを飲んでいる。
「うぱーくんが逃走した……と言っていましたが、一応遣霊って全員……」
「うん。万が一にでも接触しないように外羽達と一緒に完全隔離してたんだよね。飛び出して来たけど」
「ぴ?」
「魔術ですか?」
「どうだろう……遣霊特有の事象ではあるっぽいんだけど、いまいち原理が分かってないから対策のしようがない」
「うーん……?」
同位相であるとはいえ、断絶されている空間から空間へ渡るのは並大抵の技術じゃない。いくら遣霊に謎が多いと言っても流石に無理があるような気はするけれど。
「レンは何か知ってる?」
「んなーん?」
ニコニコ笑顔のレンに聞いても特に明確な答えは返ってこない。実際レンが密室から抜け出す、ということはないからな……うぱーくん特有の技能と言われた方がまだ納得出来る。
「目を離したら一瞬で抜け出すんですか?」
「大体合ってる。一番厄介なのは目を離す直前に全員で四方八方に走り出すんだよ」
「う、うわぁ……!?」
それは一人じゃどうしようもないな。レンは走り出してもそこまで距離を稼げないだろうけど、うぱーくんやみうくんが走り出したら俺でも手に負えない気がする。しかも一瞬でも目を離したら逃げられるだろうし。
「幸いというか、一応うぱー以外は出て来なかった訳だけど……襲撃者の性質を加味すると出来るだけ対策したいんだよね」
「そうですね。今回はリアムさんが相対したので事なきを得ましたが……」
リアムさんはうぱーくんが抜け出せることを知っていた。だからこそ人質として見せられたときに動揺せずに煽ることが出来たのだが、俺だったら多分動揺してしまっていいように利用された可能性があるからな。
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