第五十話 遣霊を害するということ・後編
「志葉!」
「(ばたばた)」
襲撃が予想されていたので華蓮さんやスミレは事前に隔離されていた。その護衛としてユウヒとゾエは待機していたわけなんだが……なんだか、やけにユウヒが疲弊しているな。
「どうしたんだユウヒ」
「何故か定期的に遣霊達が四方八方に走り出して……」
「(ふんす)」
スミレは何故か自信満々だが、つまり迷惑かけたということだな?手を広げて来たので抱え上げ、そのまま頬をつつく。何が目的だったんだ本当に、ユウヒを困らせるメリットなんてないだろうに。
「何してるんだスミレ」
「(ふにふに)」
されるがままだな。ゾエは特に疲弊している様子はないが単純にゾエはよくスミレと一緒にいるので慣れているだけの可能性がある。
「定期的に……なのか。何かを察知していたのか?」
「恐らくは……?いやどうだろう、単純に走りたかった可能性もある」
「全員が一斉に?」
「それはちょっと怪しいか……」
「怪しい!」
一人二人が走り出すのならば偶然だが、全員が一斉に、となるとかなり様子としては異常の部類に入る。特にスミレは基本的に大人しい方……というかほぼ動かない方に入る筈だ。
スミレは既に抱えられたことで眠る体勢になっているので近くにいたみうに声をかける。にこにこといつも通りの笑みを浮かべているみうに異変はなさそうだが。
「みう、何かあったのか?」
「みーみ?」
しまった俺はみうの言語を分からない。ゾエも分かったり……はしなさそうだな、俺と目が合って不思議そうな表情を浮かべているし。一応ユウヒや華蓮さんの方にも視線を向けたが黙って首を振られてしまった。
「み」
俺が困惑しているのに気付いたんだろう、みうは緩やかに首を傾げてから何度か呟く。少しずつ声のトーンが違うので何らかの確認を取っているんだろうということは分かるんだが……駄目だな、情報が少なすぎる。
「みー……」
「……何をしてるんですか?」
「アランさん」
双方共に意思疎通が出来ず、ほとほと困り果てたタイミングでアランさんが顔を覗かせる。途端にみうが表情を明るくして同じように言葉を紡げば、アランさんは成程、とだけ呟いた。
「どうやらあの侵入者達は――――遣霊を探していたようですね」
「遣霊を?」
「はい。何が目的なのかは定かではありませんが……少々対策を取る必要性はありそうです」
「……」
我関せずと言わんばかりに眠っているスミレを見下ろす。……俺の視線に気付いたのかスミレは眠たそうな瞼を少しだけ上げて、小さく俺に頬を摺り寄せた。
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