第四十二話 吐き出す痛みは、今も
「ぴょー!?」
「うるさいぞうぱー……」
慌てたようにあっちこっち走り回るうぱーくんを捕まえてゆっくりリアムの傍に近付く。無茶はしないとか言ってたけど嘘じゃん、顔を覗き込めば眠そうな瞳が俺を映した。
「……うづき」
「辛かったら助けてって言いなよ。抱え込む意味なんてないんだよ」
「別に……出来ることをしただけだ」
「それで倒れてちゃ世話ないね」
「ぷ!」
うぱーくんもそうだそうだって言ってる。流石に気まずくなったのか目を逸らしたからしゃがみ込んで視線を追った。
「医務室行こう。立てる?」
「……」
「立てないみたい。うぱー、人呼んできてくれる?」
「うっぴ!」
元気よく手を上げたうぱーくんを見送ってから隣に座り込む。杖を使わないと立てないくらい疲弊してるのによく戦おうと思ったな、しかもそれで勝ってるんだから強いよリアムは。つい、と頬をつつけばじっと見つめられた。
「お前は」
「ん?」
「……いや。何でもない」
「何でもなくはないだろ今の。何が気になったの?」
「…………凪いでいるように、見える」
言葉は少なかったけど言いたいことは大体分かる。リアムは俺が、両親が死んでいるという事実を改めて突きつけられて辛いと思ってたんだ。もしかしたら無理をした理由もその辺りにあるのかもしれない、真意はリアムにしか分からないけれど。
「凪いでる訳じゃないよ、けどリアムが思ってるよりは動揺してないと思う」
「……どうして」
「俺がなつと出会ったのって、藍沢先生に救われたときなんだよね」
「……?」
「家から連れ出されて、漸く両親を悼むことが出来たとき」
「…………それは」
言いたいことは伝わったみたい。俺はとっくのとうに二人の死を受け入れたし、それ故に絶望してなつと出会った。絶望はいつしか悔しさ、反抗心に変わってここまで来てしまった訳だけど。一度とことん悲しんだからかもうそこまで辛くはないんだよね。
「確かに写真を貰ったときはちょっと泣いたけど、今更事実を突きつけられたところで悲しくないんだよ。寧ろ、今は誰かが俺のせいで無茶をする方が、余程辛い」
「…………」
「俺はちゃんと泣けたんだよ。たった一回ではあったけど、ちゃんとお別れは言えたんだ」
「……そうか」
「そうだよ。リアムは……言えなかった?」
「……言えなかったな。言いたくなかった」
「そっか」
「自分の弱さも、いなくなった二人の事も、背負い込んでしまった兄さんの事も。……全部、認めたくなかったんだ」
「うん」
俯いて頭をぶつけて来るリアムを抱え込む。きっと今でもリアムはそれらを認めないし、認めたくもないだろうけど。……ほんの少しでも痛みを減らせるのなら、いくらでも見ない振りをするよ。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




