第四十話 時間は前後し、防衛・前編
軽く息を吸う、ある程度慣らしたとはいえ本調子には程遠いな。近付いて来る足音をぼんやりと聞きながら俺は立ち上がる。
「……どうした大雅、そんなに慌てて」
「っリアムさん!?どうしてここに……」
「どうしても何も、俺はここにいると言ったはずだが」
「貴方別に影響を受けない訳じゃないでしょう……!」
「まぁそうだな。だが別に問題はないだろう?」
「問題しかないと思うんですが……!」
「そうか?」
「そうですよ」
ちゃんと心配しているように見えるな。実際のところどうなのかは知らないが。分かっていてわざと模倣しているのか、それとも本当にバレていないと思っているのか……。
「問題があるとすれば……そうだな、ここで戦闘になると、少々厄介か」
「ここで戦闘って……まるで、そうなることが確実、みたいな」
「事実だろう?わざわざ人質まで連れて来て」
「…………」
言葉を止めたな。先程までの”らしさ”はどこへやら、じっとこちらを見つめて来る大雅に表情はない。既に秘匿する必要もない、と判断したのか、ずっと体の影に隠していた左手を見せつけて来る。
「良いのか?お前の遣霊が危険な目に遭っても」
「それは困るな」
「なら大人しくしていろ。こちらの目的さえ果たせれば手は出さない」
「そいつが本当に俺の遣霊なら……な」
「っ!?」
俺の言葉に信じられないと手の中にいる何かを見つめる大雅を模した侵入者。その姿が余程滑稽に映ったのか俺の影から出て来て笑ううぱー。
「うぴょぴょぴょぴょ」
「っどうなって……!?」
「さて、なんだろうな」
丁寧に教える必要はないだろうなと判断して軽く笑うだけに留める。うぱーは一応巻き込まれないように下げておき、剣の代わりに手にしている杖を相手へと向ける。
「どうする?ここで戦うとうっかりこいつも壊してしまう可能性があるが」
「っ……問題ない。そもそもそれを壊してデメリットを負うのはそちらだ」
「成程、破壊が目的だったか。素材にも証拠にもなるものな?」
回収か破壊だろうと言われていたが、成程後者だったか。持って帰らずとも同じものを作れる、という自負なのか、それとも最早白糸診療所に滞在し続ける理由がなくなったのか。つらつらと意味のないことを考えながら相手を煽る。
「まぁ正直なところ、こんな悪趣味な皮なんて百害あって一利なし、餌にすらならないのならこちらとしても破壊した方がいい。必要なことは全て済んでいるものでな」
「っ……」
「ああ、データを破壊しようなんて考えるだけ無駄だぞ?既に提出済みだ」
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




