第三十九話 収束を察する
「……いなくなりましたね」
「そうですね。あの感じだと……脱出用の転移術式は編まれていたとみるべきでしょうか」
怪異を仕留めながらアランさんは手早く連絡をとって状況を把握する。あの人の皮と対峙することが困難、と判断された俺やテオはそれぞれ対処出来るであろうアランさんとレンリさんの傍にいた。レンリさんは医務室にいるのでテオはそちらに、俺はアランさんと外で怪異の掃討を。案の定かなりの人数が重戦闘区域に侵入してきたようだが、はて。
「かなりの情報が……取られていると見るべきですかね」
誰かを模倣するためにはその人のデータが必要だ。模倣されている分だけ情報が漏洩しているとみて良いだろう。研究部門が関与しているかもしれないという想定はされているが、それにしたって限度がある。
「どうでしょう、詳細は聞かないと何とも言えませんが……案外、同じ人物の模倣をしている可能性もありますよ」
「それもそうか……」
「まぁ、どちらにせよ把握していないバックドアがあるとみるべきですかね。内通者も含め調査する必要があるかもしれません」
「いますかね、内通者」
「重戦闘区域にいなくとも、中戦闘区域や軽戦闘区域には……」
「ああ……」
「特に今回、ソウの情報がどこから漏れたのか、はしっかりと精査する必要性がありますので」
ソウさんがツンドラに行く、という情報は特段周知はされていなかった。にも関わらずわざわざこのタイミングで襲撃して来た理由があるんだろう、ツンドラではなく、重戦闘区域内で襲撃を仕掛けて来た理由が。
「恐らくツンドラで襲撃してこなかったのはソウが外に出る筈がない、という認識があったと思われます。その上で襲撃を実行したのは替え玉を使用するにせよ人手が薄くなると踏んだのか……あるいは、こちらが準備する前に叩くつもりだったのか。……案外、重戦闘区域を乗っ取ろうとした、という可能性もあるかもしれませんね」
「それは……かなり、状況としては不味いのでは?」
「ええ。抑止力としての効果が弱まっている、これは由々しき事態です」
今までならきっとアランさんに勝てないと判断されて計画は頓挫していただろう。何をもって出来ると判断されたのか、それが問題だ。
本来、人員増加というのは戦力増加と判断される。しかしこと重戦闘区域に限っては恐らく弱点の増加、付け入る隙だと思われていそうで非常によろしくない。そうならないために動いてはいたんだが、恐らく俺も弱点だと思われているんだろう。今回に限ってはぐうの音も出ない。……やはり最低限の動きは出来るように慣らすべきかな。
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