第三十七話 譲れない、願い・中編
踏みしめた地面が爆発した程度じゃ相手は止まらない。俺と寸分違わぬ動きをしながら双剣を操って俺にくらいついて来る。俺がわざと踏んだところで同じ耐久なら近い方が消耗していくだけだ、故に相手のみが爆弾を踏むように誘導する必要がある。
「っ!」
「この程度で俺を名乗ろうだなんて片腹痛い!」
声を張る、出来るだけ相手の視野を狭めるように。今この場で必要なのは相手を出し抜けるだけの余裕と体力だ、口調を荒げても内心は出来るだけ冷静に、自分のやるべきことを見失うな。
世界視に意識を割いて視点の先を読む。華蓮がどこに罠を仕掛けようとしているのか、どのタイミングで罠を仕掛け終わるか、それだけを把握して地面を踏みしめる。俺が通った道を相手が利用しようとしているのは分かっていた、それなら、俺が通った道が爆発すればいい。
「っ小賢しい真似を……!」
「なんだ、もう察しがついたんだ。随分と頭が回るみたいだね」
二度、たった二度の爆発で見抜くのか。……やっぱり油断ならない相手ではあるんだよな、世界視がなければ普通に出し抜かれてもおかしくないくらいには。
「……その水の塊がギミックの要か」
「そうだとしたら、どうする?」
「決まってる。完膚なきまでに叩き潰すだけだ」
「出来るものならやってみなよ」
事前に狙われても気にしなくてはいい、と言われている。心配がない訳じゃないけど……気にかけて勝てるような相手でもないからな、大丈夫だと信じて俺は戦うしかない。
頬を掠めるような軌道の攻撃を叩き落として攻勢に移る。相手が俺を放置しようとするのなら寧ろ好都合、互いに互いがどこまで動けるのかを知っているからこそ、余所見が出来ないギリギリを狙うことが出来る。勿論それは相手も同条件ではあるんだが……一体何年この身体と付き合ってると思ってるんだ、たかが数分前、数時間前に入れられた相手に負けるようなへまはしない。
「この程度で俺を殺せると?」
「随分余裕そうに振舞ってるけど……そんな余裕、ないよね?」
相手の攻撃が腕を掠める。完全に躱すにはちょっとだけ距離が近い。でもこの距離感じゃなきゃ俺の攻撃だって届かない。分かっているからこそ互いに掠り傷を増やす距離感から離れられないのだ、この状況は確かに、余裕とは程遠いだろう。少しだけ目を細めて肯定する。
「……まぁ、そうだね。お前よりはあるけど」
「っコイツ……!」
何かやけに短気だな。何言っても大概突っかかってくるというか、煽ってくるくせに煽り耐性がまるでない。もしかして俺もそういう人間だと思われているんだろうか、そうだとしたらかなり心外なんだが。
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