第三十五話 真偽、そして優劣・後編
「入江さん、大丈夫でしょうか……」
「俺達より余程相性良いだろアイツ」
アルマさんの身も蓋もない言葉にまぁそうなんですけど、と返す。幸か不幸か私達が相手をするのはアランさんの偽者、最も不確定要素が大きい存在に複数人で相手することが出来ている。入江さんの方は先程青藍さんから入江さん自身の偽者と交戦を始めた、と言っていたのでおおよその範囲では想定通りだ。
斬り結ぶ相手にアランさん程の技量は見られない。とはいえ、有象無象の侵入者、と断じるにはこの状況が待ったをかける。二人掛かりでも制圧出来ない以上、決して相手は弱くないのだ。
「チッ雑魚の癖に食らいつきやがって……」
「おや、二人掛かりでこの体たらくなのに雑魚だと断じられるとは、心外ですね」
「うるせぇ偽者が」
「はは、手厳しい」
ややアランさんのような振る舞いをしている侵入者。別にアランさんの姿だから躊躇っている、という訳ではないが何やら戦い辛さというのはある。何か仕込まれているんだろうか、もしそうなら先にギミックを看破した方が良いかもしれない。
「アルマさん」
「……ああ。どうにかしたいのは山々なんだが……」
アルマさんも異変には気付いている上で、打つ手がないのか。実際片手間とはいえ周囲の索敵をした上で何が起こっているのかが分からない。余程秘匿が上手いのか……あるいは、認識阻害を掛けられているのか。
「動きに迷いがありますね。何か気になることでも?」
「……」
「アルマさん、抑えて」
「そうですよ。激情に任せて殺せるほど、”アラン・アンシエント”は弱くないでしょう?」
「殺しましょう今すぐ」
自覚はあるけどそれを言われるのは納得いかないな。というか、偽者にそれを言われるのは非常に腹が立つ。アランさんには勝てないけど偽者に負けるほど弱くないぞ。怒りのままに叩きつけようとした刃は躱されて、反撃の刃が届く前にアルマさんによって攫われる。
「お前が先に切れてどうすんだよ。落ち着けって言ったのお前だろ」
「すみません……」
「まぁいい。今のである程度分かった。反撃するぞ」
「え」
あのやりとりで?俺がぽかんと口を開けたのを見たアルマさんはにやりと笑う。
「偽者は所詮本物の劣化版、ってこったな。どれだけ模倣しようとも、小細工に頼ってるようじゃ三流以下だ」
「……言ってくれますね」
「あ、ちゃんと煽られた自覚はあるんですね」
てっきりどんな言葉も薄ら笑いで流すのかと思っていた。そういう意味合いでの言葉だったのだが、何故かアルマさんには呆れたような視線を向けられた。……別に、変なことは言ってないと思うんだけどな。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




