第三十四話 真偽、そして優劣・前編
「せめて一人か二人であれよ」
「青藍さん」
一応さっき退室したはずなんだけどな……?わざわざシンさんもいなくなっていたし、多分途中で引き返してきたんだろう。溜息をつきながら近くにやって来たのを皇の振りした侵入者も怪訝な表情で眺めている。
「一応保護のために来たけど、不要だった?」
「いえ、それはそれで……」
「二人目がいるなら不要じゃないか?」
「……成程、そちらも偽者か」
ソウさんの振りをしていたあやめさんが模倣を止めると、侵入者も表情を消してそう呟く。
「へぇ、騙すのは得意なのに騙されるのは嫌なんだ」
「それは、当然だろう」
「因果応報でしょ」
当たりが強いな青藍さん。そりゃ青藍さんからしてみれば不法侵入者だから許す理由も優しくする理由もないんだけれども。寧ろ仕事を増やす側の人間だからな……。
「青藍は退避してろ」
「いいの?」
「三人も人は要らない」
「そう」
「……舐められたものだな」
「模倣しなきゃ相手にならないんだぞ?舐め腐るしかないだろ」
あ、煽るなぁ……!正直ここまであやめさんも煽るとは思わなかった。青藍さんが静かにいなくなったのを横目に、俺達はそれぞれ武器を手にする。
「さて、そちらも人が来たようだし、正々堂々と行こうじゃないか」
「はぁ全く……いつまでも自分に主導権があると思っている姿は滑稽だな」
「その言葉そのままそっくり返そうか。……いつまでも俺達を出し抜けると思うな」
「戯言を」
皇が動き出すのと同時、俺は身を翻して背後からの襲撃者を受け止める。あやめさんの方も皇を受け止めた拍子に纏っていた水が外れて、俺の周囲を漂った。
「その姿なら騙せると思ったか!」
「はっ!どうだろうなァ!?」
俺の顔で、俺が絶対に言わない言葉を吐く相手に少しだけ苛立ちが募る。こんなやつが俺を模倣出来ると思われていた事実が何よりも腹立たしいんだけど。勢いよく地面を蹴って室外へと飛び出した。
「逃げるのか!」
「馬鹿いえ機動力を生かすためだよ!」
正直あの広さじゃ満足に戦えない。俺と同じ姿である以上相手も同じ判断をするはずで、煽るような言葉を吐きながらも同じように廊下へと飛び出してくる。直線上で戦うことも出来なくはないけど、最初の作戦通り広い場所に出た方が良さそう。斬り結び、入れ替わりながら移動すること数分、勢いよく扉を突き破る形で室内に飛び込む。……どこかの空き部屋……いや、多分青藍さんがわざわざ準備してくれたんだろうな。
「……ここなら充分に戦える」
「分かってるか?お前が戦えるということは――――俺にとっても最高の環境ってことだぞ」
「ああ分かってるさ。本物の強さ、見せてあげるよ」
口角を上げて、煽るように。別に逆上させる必要はないけど思考は鈍化させるように。俺の姿を模して俺と対峙したことを後悔させてやる。
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