第三十二話 鏡合わせの戦い・陸
「ほい」
「はい」
「んなんな」
「駄目だよレン。溺れちゃう」
ラリマーさんから渡された水の塊は、手を離してもぽわんと周囲に浮かんだままだ。レンが興味津々と言った風に水の塊に顔を突っ込もうとしたのを止めつつ、華蓮の方を見る。
「華蓮、どう?」
「ん……まぁどうにかなりそう。ちょっとラリマーさんと一緒に隣の部屋行ってくる」
「おー」
華蓮本人が直接出られないなら視界だけでも確保出来ればいい、ということでラリマーさんの特性を利用させてもらう訳なんだけど……この水の塊がカメラ代わりになるんだ。
「よし、じゃあやってみようか!」
「あ、はい」
「レンさんは私と一緒に観戦しましょうね」
「なーん」
レンを大雅に預けソウさんに向き直る。世界視起動、見るべき情報は変化したものだけ、と意識を切り替えて斧を構えた。
まずは先程までと同じように。けれど先程よりも出来るだけ機動力を生かす、しっかりと空間を使うように動き回る。足元、壁、天井、全ての空間に意識を向けつつも攻撃の手は緩めない。
「……!」
視界端に違和感を覚え、ギリギリまで引き付けてから腕を引く。想定していれば寸前で避けれるかもしれないが、俺が何を視ているかを知らなければ絶対に躱せないタイミング。
「っ!」
「爆発した……!」
「なーん!」
初めてちゃんと当たったな。ちゃんと周囲に爆弾が仕込まれている、と知っていたソウさんですら躱せないのなら相当有力な戦闘方法なのでは?
水の塊はつかず離れず、俺の邪魔にならない場所でふわふわと浮いているだけだ。実はラリマーさんの能力ってかなり万能なんじゃないだろうか。何で水がカメラ代わりになるんだろう。
「それ、ちょっときついなぁ……!」
「それは何よりです」
「じゃあちょっと検証も兼ねて――――動きを変えよう」
「っ!」
ソウさんが急に水の塊を真っ二つにするような動きをして、咄嗟に距離を取る。ソウさんは見えないながらも俺と同じ動きをすれば接近出来ると踏んだんだろう、敢えて踏むかどうかギリギリのラインを移動しつつ、更に世界視に意識を割く。
「……!わぁお、ここ、直前に入江くんが通ったところなんだけどな」
「そうですね。俺が”爆弾に変わる”直前に踏んだタイルです」
「へぇ、時間差でも分かるんだ」
「少々頑張りましたけどね」
ちゃんと渡り合える、戦いになる。要求されている技量は非常に高いものだが、届かない訳じゃない。出来る限り情報を集めて、最善の一手を狙う。
「これで――――」
勢いをつける。逃げられないように、間違えないように。強く握りしめた刃の切っ先が届くまで、あと。
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