第二十三話 出来ることをそれぞれが・後編
「大丈夫ですか志葉さん」
「何がですか?」
戦闘が終わったタイミングでの言葉に俺は顔を上げる。アランさんの瞳から真意を読み取ることは出来ないが、恐らくこの戦闘でのことを指している訳ではない、ということだけは想像がついた。
「……人の皮についてですか?」
「ええ。体調を崩したと、そう聞いていたので」
「問題ありません。確かに意識は失いかけましたが……大雅と入江が近くにいたので」
「成程」
一人で確認していたら少々面倒なことになっていたかもしれないが、幸い安全を保証できる二人がいたから大事には至らなかった。……そう考えると少々浅慮だったか、たまたま意識が落ちる、という方向性で発動したからよかったものの、特性を強制的に使わされる、だとか自我を奪う、だった場合被害が出ていた可能性も高い。
「…………すみません、力になれなくて」
「えっ、それは……?」
「慣らせばどうにかなるかもしれませんが、どうしても一人で慣らすのは厳しいみたいで」
「いえ。……毒なんて慣れない方が良いですよ。医療部門にとても怒られます」
「怒られたんですか」
「ええそれはもう。毒が効かないということは薬も効かないという事ですからね。元々効き辛い体質ではあったんですが、ほぼ効かない、まで進行して非常に怒られました」
それは……確かに、怒られてもおかしくはないか。アランさんは医療部門、と濁したが恐らく藍沢先生にこってり叱られたに違いない。
「それに…………志葉さんは接触さえしなければ動ける、と聞いています。ですので、最悪幽撃を挟めば戦闘自体は出来るかと」
「成程?」
幽撃か、それは盲点だったな。流石に剣を挟んだ程度では厳しいかと思っていたので幽撃を一枚挟むだけでマシになるのならば格段に動きやすくなる。一度試す必要はあるんだが……どう試せばいいだろうな、幽撃を挟んでもう一度触れてみるか。
「出来ることをすればいいんですよ。無理に慣らそうとしなくてもいいんです」
「でも、アランさんはその無理を通した側です」
「それは…………ええ。でも、今はそこまで通していません」
無理を通している自覚はあるのか。今はマシになった……というのは、黒野さんの件などを指すんだろうか。確かに黒野さんに関してはほぼ俺達に一任されていた。
「正直、俺達にとっては普通のことでも他人にとってはそうではないことが多いです。ですので、どこまでを無理と判断するのか、というのは難しいんですよね」
「そうですね」
俺にとって毒を慣らそうとする行為は無理ではなかったが、入江達は無理だと断じた。……そうか、アランさんの自覚が薄かったのはこういう点がありそうだな。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




