第二十一話 合理的判断で無理をする・後編
まさか皇がここまで相性が悪いと思わなかったな。壁によりかかりこちらを見る姿はさっきまでと比べると幾分かマシになったけれど、触れた直後の顔色はそれはもう悪かった。そのまま倒れるんじゃないかと心配になるくらいには。
大雅は相変わらず何の躊躇いもなく皮に触れて確認をしている。俺は影響こそないけどあんまり触りたいとは思わないな……。純粋に感触が気持ち悪い。偽物に触れても判別は出来ないけど、偽物だと分かっていたら分かる、程度の絶妙な感覚だ。世界視の方も色々と調整を掛けたけど文字が濃くなったりはしないらしい。
「よく考えると……あの人形使いと交戦した同僚達が軒並み体調を崩したのって、恐らくこの毒が原因ですよね?」
「ああ確かに。そう考えるのが自然かも」
「となると、ですよ?思考低下が発生するということは戦闘能力が落ちるということで。……素の戦闘能力が低くても問題ないということになりますよね?」
「そうなるね」
「その場合……人海戦術が通じてしまう、ということでは?」
「……!」
幸い、重戦闘区域では影響を受ける人の方が現時点では少ない。だけどヒュリスティック全体に襲撃が起こったら?警備隊との戦闘を見るに本来はちゃんと毒として機能しているようだから、恐らく正面から衝突すると非常に分が悪い。
「不味い、な……」
「ええ。そして一番不味いのは、アランさんの模倣が出来る、ということで」
「ただでさえ戦力の低下を強いられるのに、アランさん自体が強いから……」
「苦戦で済めば御の字、でしょうね」
流石に相手側にも何らかの制限があるかもしれないが、一人でも模倣出来る時点でこちらは非常に不利になる。そもそも細胞を持っていればいい、という場合、大雅や俺は充分模倣される可能性もある訳で。
「思ってるよりも、不味いな……?」
「はい。勿論私としても杞憂であれば良いと思っていますが」
ヒュリスティック自体は隔離された空間にあるけど、だからといって襲撃が皆無という訳ではない。相手が怪異ならばいざ知らず、人間だって一枚岩ではない以上襲撃は発生するわけで。
「……やっぱり、最低限俺も判別出来た方が……」
「いやそれだけはない。絶対にない」
「皇さんが無理を通すよりも先にとれる対策はある筈です」
一先ず誰が影響を受けて誰が影響を受けないのか、判別出来るのは誰か、くらいはちゃんと把握しておくべきかもしれない。それによってとれる対処法も変わるだろうし。不満そうな皇が勝手に動く前に対処法を確立させないとならないな。
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