第十九話 合理的判断で無理をする・前編
触れている部分に意識を集中させる。僅かに目眩がするな、と思った瞬間にはもう大雅によって引き剥がされていた。
「っぶな……!」
「明らかに今意識が飛びかけてたんだけど、大丈夫?」
「ああ……ちょっとくらくらする」
「駄目じゃん」
頭をかき混ぜられるような、身体の中身をぐちゃぐちゃにされるような気持ち悪さがあった。勿論それが錯覚だと知っているから意識が遠くなる程度で済んだが、成程これはかなり人を選ぶ。
人の皮、と呼ばれているスーツの判別をするために確認しに来ただけだった。事前に人によっては体調を酷く崩すと聞いていたが、ここまでくると体調を崩すどころの騒ぎじゃないと思うんだが。まぁ何の確証もなく大丈夫だろう、と思っていた俺も大概か。
「悪いが、俺はこれと相性が悪いらしい」
「そうだね。良かったちゃんと不味いと判断してもらえて」
「もしこのまま判別を続行する気なら全力で止めてましたよ私」
「流石にそこまで考えなしじゃない」
少なくとも自意識を制御出来なくなることは望ましくないので避けるべきだろう。仮に倦怠感程度で済んでいたら続行していた、という点においては黙っておく。
「だが……そうか、裏を返せば俺が”こう”なる相手というのは皮を被っている相手なのか」
「極論……ではありますが、そうですね」
触れてから意識が飛ぶまでに動けるだけの余裕があれば一考の余地はあるな。現状ではそこまでの余裕がないのでどうしようもないが。……慣れることはあるんだろうか。
「何か悪いこと考えてそうだから先に言っておくけど、別に無理して皇が見抜けるようになる必要はないんだからね」
「だが、触れた瞬間に戦闘不能になるのは純粋に困る」
「そうかもしれないけど、少しくらい俺達を頼りなよ。確かにお前は単独行動も多いかもしれないけど……」
「……頼ってると思うんだが」
少なくともこの皮の判別は全て入江と大雅頼みになるぞ。そういう意図も込めて呟けば、入江と大雅は一度顔を見合わせてから深いため息を吐いた。
「類友、っていうのかなこれ」
「そうですね。いやはや道のりが遠い……」
何やら酷く呆れられたな。別にそんなおかしなことは言っていないし、決して虚勢を張っている訳でもないんだが。まるで幼子に言い聞かせるような口調で入江は俺に言葉をかける。
「あのね皇、ちゃんと頼ってるっていうならせめてその顔色がマシになるまで休んで」
「顔色」
「そう。ひっどい顔だよ今。俺には倒れる寸前に見える」
そんなに酷い顔をしていたのか。別に倒れるほど体調が悪い訳ではないんだが……思っていたよりも相性が悪いんだな。
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