第十三話 識別方法・前編
「人の皮……」
「外見上は、ええ。入江さんにはどう見えますか?」
「かなり薄いですけど情報が見えます。服のところは普通に見えますね」
物理的に文字が薄く見えるのは初めてだな……。多分だけど、人がこれを被ってたら文字が薄すぎて見るのに苦労すると思う。判別出来るか?と聞かれるとちょっと困るレベル。
アランさんに見せられた服を着た人の皮は、アランさん曰く”外装”ではないらしい。確かにナタさんから情報を読み取れた覚えはないので違う、というのは分かる。一応許可を取って触れてみたけど、本当に人の皮膚を触ってるみたいな質感でちょっとだけ気持ちが悪かった。
「これ……可動域が狭いというか、質感は皮膚に近いですが変な強度がありますね」
「布袋曰く定められた動きしかできないそうですね」
「敢えて、ですかね……本当に模倣するためだけの存在というか」
「恐らくは」
そもそも完璧に模倣するためのものだから本人がしない動きをするわけにはいかないって言う事か。それはそれでどういう技術なんだと思わない訳でもないけど……大雅は不思議そうにあちこちを触って動きを確かめている。
「中に人が入ったらまた変わるのかもしれませんが……この質感、どこかで……?」
「えっ」
「……もしかして、既に一般区画にはいると……?」
「いや、そこまでは分かりませんけど。…………ただ、記憶が正しければこの質感……警備隊にいたような」
「あー……」
「あぁ……」
警備隊か……それなら逆に納得するというか、寧ろ一般人が成り代わられているというよりも説得力がある。最近の不穏な動きにも寧ろ信憑性が出てきたな。
「成り代わりだとした場合……元の人間はどうなるんでしょうね」
「確実に死んでいる、という訳ではないでしょうけど……余程の事がない限りは怪しいですね」
「はい。短時間のみの成り代わりならばともかく、長時間、長期間となると」
それこそ本人が名前も姿も経歴も捨てて新天地で生きている、という場合以外は有り得ないか。一般区画の方でドッペルゲンガー騒ぎなどが起こっていた記憶もないのでほぼ確実に死んでいると見ていいかもしれない。
「入江さん、仮にこれを被った存在が現れた場合、判別は出来ますか」
「うーん……いると分かっていれば出来ると思いますが、不意に現れるとなると……」
流石にこの皮を観測手が察知してくれるとは思えない。日常的に世界視を起動していても、文字の薄さ故に見落とす可能性がある。
「私は多分見抜けますね。接触前提になりますが」
「接触で……」
「はい。接触で」
大雅はこの質感の差異を見抜けるんだ。正直俺とアランさんは見抜けないと思う……違いはあるけど個人差で収まる範囲じゃない?
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