第十話 皮を被る
「確かに肉体ごとスーツになっている可能性について指摘はしたが……」
「誰が本当になってると思うんだ……」
「もーもい」
クローゼットを開けたら頭からつま先までくっついた人の皮があったときの反応を教えてほしい。思わず変な声が出たのは致し方ないと思う。
「ももも?」
「やめろもも触るんじゃない。……どうしようかな、これ」
「一応証拠品にはなるが……」
「クローゼットごと回収してもらうか……?触れても問題はないと思うんだが、ちょっと気持ちが……」
不思議そうな表情を浮かべて触ろうとするももを止めつつ思考を回す。ももが触ろうとしている時点で危険はないんだろうが、如何せん一着一着服が違ったり髪型が違ったりするのが非常に惨い。本当に人の皮を纏って生活していたんだな……人間を何だと思ってるんだ。
流石にこれをそのまま持って帰ることは不可能なのでシンに連絡をして引き取りに来てもらう。その間にも掃除は進み、シンが慌てたように現れる前に全ての掃除が終了した。
「ごめーんちょっと遅れてぇ!」
「いや別に待ってはないが……」
「今日は客人が多いな」
「もい?」
「はは、普段は一人で仕事をしているから新鮮だ」
朗らかに笑っているがやっぱり普段は一人で作業をこなしているのか。……かなりの範囲を一人でこなしていないか……?これ本来ならば複数人でやる仕事量だろ、確かに一人でやっているにしては異常な速さだったけれども。
「キミが……例の協力者くん?」
「ああ。ジェイと言います、はじめまして」
「はじめまして。俺はシン。一応妖怪の部類に入るよ」
「おお……妖怪か、初めて見たな」
「もーい」
「因みにももくんは遣霊だよ」
「遣霊も初めて見たな。小さいとは聞いていたが」
「もい?」
ももの正体を知っても動じないか。それどころかシンと対峙しても警戒したり怯えたりする様子すらない。流石に肝が据わり過ぎてるだろ。
「それで?人の皮が入ってるクローゼットって?」
「これなんだが」
「うーわ」
シンも引くとか相当だろ。ちょっとだけ確認するように顔を近づけたがすぐに引っ込めて俺に本当に持ち帰るのかと視線だけで問うてくる。俺だって遠慮したいが証拠であることに違いはないからな、大人しく持ち帰ってもらうぞ。
「えぇ……?正直大分遠慮したいんだけど……」
「俺も嫌だが。流石に置いていくわけにはいかないだろ」
「それはそうなんだけどさ……すごいねこのおおよそ人の所業とは思えない物体」
「確かに人の所業だと考えたくはないが、妖怪よりは可能性があるな……と」
「人間はもうちょっと善性の生き物であってほしいと思うよ。割と切実に」
「殆どの人間は善性の方が強いが俺達が相対する相手にそんなもの期待するだけ無駄だろ」
「元も子もないこと言わないでよー」
善意だけの世界ならそもそもあの兄弟が生まれつき重戦闘区域に収容されることもなかっただろ、とは流石に言えなかった。
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