第六話 龍と龍・後編
「あの龍は……何で人の姿を取らないんでしょうね」
「……」
「いうえう?」
「……いや、俺は別に直接会ったことはねぇからな。詳しいことは知らん」
レンリさんは医療部門の職員だから戦闘区域には出ない。言っていることは正しいんだけど、興味関心があれば勝手に飛び出すレンリさんが大人しくしている理由が良く分からない。
「ミライさんは本来の姿の方が負担が大きいって言ってたじゃないですか。それなのにあの龍はずっと姿を変えない、確かに存在としては上位に位置するのかもしれませんが……それなら猶更人の姿になるのでは?」
「まぁ…………そうだな。一般的にはそうだと思う」
「一般的には」
「ああ。実際ミライほどじゃないにせよ、人間態になれば必要リソースが減って基礎スペックが落ちるからな。わざわざ人の姿を取らず龍としての姿を維持する必要があるとすれば――――胎の中に、何かを隠してるんだろうよ」
「胎の中に……」
「あえあ?」
「そうとも言うが……れおが思ってるような意味合いではないな。方向性としては神隠しに近い」
「人の姿だと、領域を維持できない?」
「確保出来るリソースが減るからな」
なるほど。そう言われればそうかもしれない。話によると重戦闘区域に来てからサイズ自体は小さくなったらしいが、現世よりも存在強度が低い故に領域を維持するリソースも少なくて済む、と言われれば充分納得出来る。
「僕、龍が隠すものって大体番か魂を捧げるに値する相手だと思ってるんですけど」
「そうだな。実際そうだと思うぞ。わざわざ誰の目にも触れないように、存在すらも隠すなんざその二つしか有り得ねぇ」
「おー……」
よく相手は隠されることを受け入れたな……という感想が先行するな。完全に外部と遮断されてる状況ってなかなか苦行だと思うんだけど、どうしようこれで不可抗力だったら。
「つっても龍種って確か基本的には相手の自主性に任せるというか……神隠しは本当に最終手段だった筈だから、余程の事が起こったと見るべきか……?」
「今も隠してるってことは、外に出せない理由があるってことですもんね」
「そうね。事実こっちに来たときに上位存在からの干渉があったし」
「あうあい?」
「ま、想像よりは」
上位存在からの干渉があったということは多分隠されている存在は天界由来、それもかなり希少だろうという想像がつく。秘匿状態にも関わらず干渉があったということは、龍が隠していることを知っているという意味でもあり、故にこそ龍が人の姿を取れないだろうことも分かる。少しでも領域から出してしまえば、ここぞとばかりに襲撃が発生するだろうことも。
「……」
「苦しい、悲しいと……そう思ったか?」
「そう、ですね。報われないな、とは思いました」
龍がどういう経緯を経て領域に隠すことになったのかは分からない。分からないけれど、閉じ込めることを望んでいたわけではないだろうという想像だけはついた。だからこそやるせない。そんな僕の考えを読んだのか、レンリさんはからからと笑う。
「大丈夫。確かに今はどうにもならねぇが……近いうちに、対抗手段が見付かるさ」
そう……なのかな。それなら良いんだけど。
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