第二話 過去をさす
「白糸家の制圧……ですか」
「はい。あそこには確実に、”擬態”してる存在がいるので」
「……西、でしたよね」
アランさんは一言一句、確かめるように言葉を呟いている。流石に一般区画に赴く、っていうのは難しいのかな……でもこれが可能になれば確実に切れるカードは増える。
「可能ではありますが…………」
「何か問題が?」
「そうですね、大前提として基本的にヒュリスティックの職員が一般区域に干渉することは望ましくありません。一般区域での問題、騒動、事件その他対処が必要な事柄は警備隊の管轄ですから。それを踏まえた上でどうするか、という話ですが」
そこでアランさんは一旦言葉を切り、少しだけ眉間を揉む。疲労が溜まっているんだろうか、色んな問題を同時並行で抱えているから考えることも多いし、疲弊していてもおかしくはない。
「……あややに連絡をとりましょう。話はそれからです」
「大丈夫ですか?」
「ええ、問題ありません。相手が西の……楽園教であった場合、警備隊では対処してもらえるか不安が残ります。それに……宇月さんにとっても、あまり他人に任せたい事柄ではないでしょう」
「それは…………」
肯定して良いものか悩んで、言葉が詰まる。そりゃ俺にとっては両親の仇だし、叶うならば自分の手で終わらせたいと思ってる。思ってるけど……それが出来るほどの力は俺にないし、我儘を言えるような立場でもない。そう判断して曖昧に言葉を濁した。
「まぁ……」
「流石に現場に連れて行くことは出来ません。手段としても強硬手段になる。それでも……出来るだけ、宇月さんの意向に沿えるようにしたいとは思います」
「いえ、そんなことしなくても大丈夫です。もう両親は死んでいるので」
「……復讐する気は、ないと?」
「ないというか……俺としては、もう終わったことなんで」
「そうですか。……いえ、せめて建物に被害は出さないようにしましょう」
律儀というか……真面目だな。別に気にする必要なんてないのに。どうせ俺はヒュリスティックに骨を埋める気だから何処までいっても無意味。……でも、残してくれるんなら残してほしいのかもしれない。僅かに残った思い出をわざわざ壊したいとは思えないし。
「誰が行くんですか?」
「そうですね……あややからの要望によりますが、志葉さんかアルマさんか……白糸家にいるのは、両親を模した存在、二名だけですよね?」
「そのはずです。あ、でもたまに知らない人は来てたから……」
「成程、連絡手段はあると見た上で動いた方が良さそうですね」
「はい」
さぁ、これで何かが動けばいいんだが。
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