第一話 模した者
「龍種を狙う組織?東雲が元いた研究所?」
「はい。ノエルさんなら何か知っているかな、と思いまして」
「うーん……?ちょっと待ってね、何か引っ掛かりはするんだけど……」
うんうんと考えながら視線を上に投げるノエルさん。一応知ってはいるのか……酒見事務所なら何の情報を知っていても不思議じゃない、か。考え込むこと数秒、ふと思い出したかのように小さな声をあげた。
「そうだ、西……」
「西?」
「うん。西の楽園教、そこの協力してる研究所が、確か近いことをしてたはず」
「……」
西、つまり……鳥飼氷雨を追いかけ、挙句の果てに俺の両親を殺した奴らが原因、か。俺の表情から何を考えているのか察したんだろう、ノエルさんと東雲は揃って気まずそうな表情を浮かべる。気にしてないというように手をひらひらと振りつつ、苦々しい思いで言葉を吐き出す。
「余計な事ばっかりしてるな、西の楽園教って……」
「ま、まぁ……他の地区と比べても過激派だからな、西は」
「犠牲を以て目的を達成しようとする組織ですからね。その割に自分達から犠牲を出すことは許容しない」
それぞれの地区にいる楽園教、その全てが同じ目的を持ってる訳ではない。……分かってはいるけど、どうしてよりによって一番過激なやつが西にいるんだろう、とも思ってしまう。南に次いで人が多くて、戦闘と縁がない人が多いのに。……拉致するならそっちの方が都合がいい可能性もあるけど。
「西の楽園教の情報、ありますか?」
「いやぁ……事務所にはあると思うけど、俺はそこまで詳しくないんだぞ……ちょっと時間を貰えれば調べられると思うけど」
「アランさん達の反応にもよりますかね?情報はあればあるだけ良いと思っていますが、探ることで勘付かれることもあるので」
「そうだな。ちょっとアランさんとは話しておくんだぞ」
「はい」
犯人が分かったところで根本的解決にはならないが、切れるカードは多ければ多いほどいい。東雲を生み出し、現在ミライさんを狙っている研究所。もう少し被害が増えれば直接潰すだけの理由になるだろうか。
「せめてなぁ……物的証拠があればもう少し圧も掛けやすくなるんだろうけど」
「物的証拠」
「そう。今は憶測で語ってる部分も多いから、直接つつくには弱いんだぞ」
「そうですね。ミライさんの件も、宇月さんの件も、関与したと言い切るには証拠が足りない」
「……俺の件?」
「宇月さんの両親を殺し、宇月さんを利用しようとした件です」
真っ直ぐと視線を合わせて吐き出された言葉を飲み込むのに時間がかかる。……そうか、泰誠は、俺の事も救おうとしてくれるんだ。
「……いや待てよ、擬態……?」
「え、……あ」
いるじゃないか、現在進行形で擬態してる奴。あれを捕まえれば……もしかして、物的証拠になる?
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