閑話その30 小さな訪問者は遊びたい・前編
「(ふんふん)」
「……あれっ」
廊下を動く小さな影を見つけて俺は思わず声を出す。おかしいな、ミライさんはもう魔術部門に行ったはずなんだが。俺とスミレを見つけて意気揚々と近付いて来たアルカに、俺はしゃがみ込む。
「何してるんだアルカ。一人で来たのか?」
「(にへら)」
「(てちてち)」
気の抜けた笑みを見せたアルカと、そんなアルカに寄って行くスミレ。楽しそうだな二人共、とはいえミライさんに話を通しているのかも不明なので二人揃って抱え上げる。さっと気配察知をしたが、ミライさんがいる様子はない。
「アルカ、ミライさんには言ってるんだろうな?」
「(こてん)」
「……魔術部門に行くか……」
「(もちもちもちもち)」
「(もちもちもちもち)」
歩き出した俺の腕の中で互いの頬を揉み合う二人。普段なら自分以外を抱えていると非常に暴れ出すのだが、アルカはいいのか。何が違うんだろうな……同じくらいのサイズ感であるももを抱えていると普通に暴れるのに。
「あれアルカちゃんがいる」
「入江、リアムさん」
魔術部門へ続く廊下を歩いていると、入江がリアムさんと一緒に前方から歩いて来た。リアムさんは少しだけ眉を上げたが、アルカを見たのは初めてだったんだろう。アルカだけじゃなくスミレも不思議そうな表情を浮かべてリアムさんを見上げている。
「ミライさんもいるの?」
「いや……一人で来たのかもしれないと思って、一旦魔術部門に行こうかと」
「え、一人で?」
「ああ。少なくとも気配がないから」
「一人で……扉とか開けられるんだ……」
「言いたいことは分かる」
スミレですらイデアを使って開けているんだぞ。アルカ一人で扉を開けられるとは到底思えない。だが事実としてアルカはいるのにミライさんはいないので、何らかの方法で重戦闘区域にやって来たと思われる。
「……小さいな」
「(むいむい)」
リアムさんが伸ばした指を掴んでいるアルカ。スミレも真似するように手を掴んでいるが……リアムさんは気にする様子がないな。口を開けてかじろうとしたときには流石に止めたが。
「というか……魔術部門にスミレくんも連れて行くの?」
「いや……」
それは流石にスミレも嫌がるんじゃないだろうか。魔術部門の先輩方と出会ってどうこう、という訳ではないが。ひとしきり遊んで満足したんだろうか、アルカとスミレはリアムさんの指から手を離し、揃ってゆらゆらと揺れ始める。
「落ちるぞ二人共」
「(ゆらゆら)」
「(ゆらゆら)」
なんでいちいち行動が揃うんだろうな。互いに互いを真似しているのか……?
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