第六十一話 存在の証明
「遣霊ってのは主人の心が限界になったときに現れる存在だ。逆説的に言えば、余裕がある状況下では現れない」
「そうですね」
「そんでもって遣霊の持つ固有能力は大抵主人の状況を改善するために発現する。こっちに関しては例外もあるかもしれんが……」
「その辺りは本人に自覚がない場合があるから何とも言えませんよね」
「そうなんだよなァ……」
話が聞きたい、と言われてレンリさんに部屋に呼ばれた。いつの間に仲良くなったのかなつはとあくんのところに遊びに行ってるので一人だけで部屋に行く。気になることがあった、という前置きの下で告げられる言葉から真意を読み取ることは難しい。少しの間忙しそうに机にかじりついていたレンリさんだけど、大きく伸びをするように机から身体を離したタイミングで本題を促した。
「どうしたんですか、一体」
「……宇月は遣霊専門の医者、だよな」
「え?ええ……一応そう言われもしますけど」
「遣霊じゃない遣霊のような存在、ってのは有り得るのか?」
「遣霊じゃ……ない?」
よく分からない発言をされてるな……?基本的に遣霊に類似した存在、というのはいないはずだけど。見た目だけなら幼児、子供が近しいが、その生態が明らかに違うので。
「いたんですか?そういう存在が」
「いたっつーかいるっつーか……成立理由も分からなけりゃ、本人達の自認も違う存在がいる。実際どうにも遣霊としては近いがそのものって感じがしない」
「別種族……?」
遣霊に近い種族なんているんだろうか。寧ろそういう存在はレンリさんの方が知っていそうだけど、ここまで首を捻っているということは多分いないに違いない。遣霊に存在を近付ける理由、基本的に遣霊は他者に害されないという共通の加護があるからそれを模倣したい可能性もあるが……流石に無理があるな、と思う。
「少なくとも俺は見たことも聞いたこともありませんね。遣霊になろうとした研究はありましたけど、遣霊の性質上研究のしようがありませんでしたし。生み出す方の研究でも対象に膨大なストレスをかけなければ無理、と言われていたので確実に自覚はするはずですし」
仮に自覚なく生まれる可能性があるとするならば、それは恐らく本人が長期間ストレスを抱え続けて麻痺した場合だと思う。その場合でも急に子供が現れたらまずは遣霊を疑うだろうし、思い当たる節はあって然るべきだ、と思う。
レンリさんは天井を見つめたまま思案するように沈黙を返す。本人達も自覚がない、遣霊のようでいて遣霊ではないもの。ふと思い出したのは鳥飼さんが初期のころ連れていたスイくんの偽物で。……一度、確認した方が良いような気がするな。
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