第五十八話 実在を晒す・前編
「俺も見えないんだよね」
「俺も分からん」
「ワカラーン」
「分かんなーい」
ウロさん、雪代さん、ワカバさん、ラリマーさんの誰もが首を振る。よりによってウロさんも見えない……というのはちょっと異常だな。確かウロさんは人より見えるものが多い筈なので。
縛り上げてるからどこにいるのか、は全員分かる。だけどそれ以外が何も分からない。雪代さんは一度透明化の解除を試みたらしいが、何の術式を使っても効果がなかったと。俺が呼ばれたのは辛うじて存在を認知出来るから、というのと第一発見者だかららしい。
「取り敢えず情報抜くための術式はあるんだが……詳細を抜くとなると対象を絞る必要があってな。外見情報は手っ取り早い条件として使えるんだよ」
「あー……」
「種族的特性……かもしれないけど、それにしてはなんというか、変だよね」
「コイツニンゲン!」
「にんげーん」
「だよなぁ。つまり術式で解除できないタイプの透明化が付与されてる、ってことになるんだが」
「特性……ですかね?」
「特性なら解除できるはずなんだよ」
「ゆっきーが解除出来ないものってまずないからね」
「…………」
特性でも解除出来るんだ。基本的に特性の方が魔術よりも有用性は上回ると思っていたんだけど……雪代さんの魔術練度が高すぎるだけかな。
「魔導具……とかですかね?」
「魔導具、なぁ……。その辺俺は専門外だぞ」
「俺もそうだよ。というか道具系は布袋以外分かんないんじゃない?」
「入江くんも別に姿が見えてたりはしないんだよね?」
「はい」
「じゃあ身体検査、も難しいか。誰か一人でも見えれば話は早いんだけど……」
「あ、いえ。”道具”なら情報はとれます」
「世界視か」
「はい」
呪具は目視するだけで呪われそうだから遠慮したいけど、魔導具なら特に問題ないだろうから探すことは出来る。とはいえあんまりむやみやたらに人の体をまさぐりたくはないので……世界視から受け取る情報を侵入者からのものに絞った上で、情報量を増やす。
「…………ありました。これです」
「なん…………え、本当に何だコレ」
「え、何……大丈夫これ、爆発とかしない?」
青藍さんがそう言いながらワカバさんとラリマーさんを下がらせる。俺が見つけたのは楕円の球体……形だけで言えば手榴弾に近い何か、だった。一応情報から察するにこれが魔導具で間違いはないはずなんだけど……形状が悪い。
「その上のピンを……抜くの?」
「いえこれは飾りですね。ええと……あ、ここか」
くるくると手の中で道具を回して小さな窪みに爪をひっかけ、そのまま剥がす。パカリと開いた瞬間雪代さんが声にならない叫びをあげたけど……透明だった不審者もベールが剥がれたように姿を現した。
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