第五十五話 正体を晒す・後編
堂々巡りの取引。死にはしないので無理矢理押し切って制圧しても良いんだが……いかんせん場所が悪い。せめて入口を塞ぐか、もう少し距離を詰めれるならばやりようがあるんだが。
「……ったく、知らないところで碌でもない利用のされ方しやがって」
「おや、貴方は……この呪具の元となった人物を知っている、と?」
小さく呟かれた言葉に目ざとく反応する侵入者。今の発言的にはそう聞こえたんだが……だからこそいつもよりもレンリさんが殺気立っているのか?
「口を慎めよ不法侵入者。ただでさえ今は虫の居所が悪いんだ、お前の軽口に付き合うつもりなんざない」
「おや、口を慎むのはそちらですよ医療部門職員。今貴方の生殺与奪を握っているのは私なのですから」
「戯言だな」
その言葉の直後、レンリさんが自分達の真上に爆弾を出現させる。咄嗟にレンリさんを突き飛ばして距離を取ろうとした侵入者を掴む姿は、是が非でも巻き込むという強い意志があった。
「レンリさん!」
「っスミレ!」
ここからでは届かない、と判断して咄嗟に口から飛び出したのはスミレの名前だった。伸ばした腕よりも長く、俺が動くよりも早く何かが動く、認識が追い付くよりも先に小規模の爆発が起こった。
「天波羽織……!」
俺の腕に巻かれていたネクタイが、姿を変えてレンリさんを守っている。距離が近すぎたからか侵入者のダメージも軽減してしまったようだが……明確に今、隙が出来た。
「っこうなったら……!」
「何を。しているんですか」
聞き馴染みのある声。侵入者が咄嗟に逃げようとするのを阻み、もう一度アランさんは問い掛ける。
「呪具を利用し、人の姿を利用して、何をしているんですか、貴方は」
「っアラン・アンシエント……!」
「ええ。貴方が利用した、その張本人ですよ」
アランさんの言葉に抑揚はない。ただ静かに、事実を羅列するかのように言葉を淡々と吐き出している。激情も苛立ちもみえないな、いつも通りの表情、いつも通りの気配で自分そっくりの相手を見つめているだけだ。
「っ……貴方が来てしまったならもう時間切れですね。残念です」
「いいえ、時間ならたっぷりありますよ。貴方が情報を洗いざらい吐く時間がね」
「おっとそれは遠慮したいですね。痛いのは嫌いなので」
「痛みを伴うかは貴方の態度によりますが。――――逃げられると思うな」
「っ!」
アランさんの行動に合わせて動く。組み伏せるために腕を掴んだ瞬間……俺達の目の前で、侵入者は煙のように姿を消してしまった。
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